・分布 :本州(愛知、紀伊半島、山口)、四国、九州
・生育地:湿気の多い林中や沢沿いの岩壁に自生する。
・花期 :5月~6月
・草丈:5~25cm(花茎)
・特徴 :地生の多年草で、形態はシライトソウに準ずるが全体に小型である。根出葉はロゼット状に出て、卵形~狭卵形で、葉柄とともに長さ2~8cm。花茎は高さ12~30cm、線形または披針形の葉がある。
花茎の頂に穂状花序がつく。花序は4~15cmで、シライトソウのくらべて花数は少なく下から順に咲く。上方の4花被片は糸状で長さ9~15㎜、先は幅広くなく、下方の2花被片は退化する。
・名前の由来:シライトソウ(白糸草)は白色の花被片を白糸になぞらえたもの。チャボ(矮鶏)は小さいという形容で、チャボシライトソウ(矮鶏白糸草)は小型のシライトソウということで命名された。
また、属名のchionographisはギリシャ語で雪の筆を意味する。
シライトソウは上方の4花被片は白色、線形で先が幅広くなり、下方の2花被片はごく短いのに対して、チャボシライトソウは上方の4花被片は緑白色、糸状で下方の2花被片は退化している。
根出葉はロゼット状に出て、卵形~狭卵形で、葉柄とともに長さ2~8cm。
四国山地の泥岩と砂岩からなる地層を侵食して流れる渓流の上流域の標高400mほど地点の川岸の岩肌にキシツツジなどとともに生育している。渓流の水面から約1.5mの高さの
川岸の半日蔭の風通しの良い苔むした岩上に自生している個体で、清々しい感じがする。渓流沿いには広葉樹林もみられるが、周辺の山はスギやヒノキの植林地である。
年に数回、増水時に水に浸かるためか、流れに近い川岸の岩上はキシツツジやコケ類が多く、この個体はコケ類の中に根茎を下ろしており、このような環境を好むようである。
花は穂状花序につき、左右相称。上方の4花被片は緑白色で糸状、下方の2花被片は退化している。4花被片の伸びている向きは整然としてなく不規則で、糸状の花被片も折れ曲がったりしている。
生育地域が変わると、個体にも変化が見られ、花序が全体に赤紫色を帯びている。生育環境は変わらず、渓流沿いの岸辺の半日蔭の岩壁である。
赤紫色の花は少しシックな感じがする。この個体は草丈(花茎)が約15cmと小さく、花序につく花数も少ない。
前画像と同じ場所であるが岩上でなく岸辺の傾斜地の土壌に根茎を下ろした個体で、富栄養のためか草丈(花茎)が約25cmと大きく花数も多い。
越冬したロゼット状の葉は緑紫色であるが、展開したばかりの葉や茎葉は黄緑色である。
花序には花の数が少なく7個の花が咲いている、糸状の花被片が基部の赤紫色からしだいに先端の淡緑色に変化している様子がおもしろい。
雄しべは6個、花柱は浅く3裂し内側に柱頭がある。花被片は上方の4個だけで下方の2個は退化して見られない。
13個ほどの花序が赤紫色の個体があるが、いずれも開花状態でありながら花被片は見られず、退化していると考えられる。
そのため一見してチャボシライトソウとは判別しにくいほどである。この場所は地質が超塩基性岩の蛇紋岩地であり、その影響も考えられる。
標高約550mのこの場所は植林された標高約800mほどの山の山すそに位置し、地質が超塩基性岩の蛇紋岩地であり、岩肌が見える斜面から滲みだす水により平地は湿気気味である。
けれまでチャボシライトソウは渓流沿いであったが、ここでは林縁である。この個体は花茎が紫色で花被片はあるが4個ではない。
花序の近接画像であるが、赤紫色の花序にある花の糸状の花被片は本数や長さが花によって異なり統一性がない。
長さ10cmほどの多数の花をつけた花序であるが、いずれの花も花被片は退化して見られない。
前画像の近接画像であるが、花を詳細にみると1個だけ短い花被片が見られるが、その長さは6個ある雄しべの花糸より短い。
渓流の水面から1mほどの岩棚のコケ類の中に根茎を下ろした個体。栄養分も少なく冠水するような場所で健気に自生している。
雑感:初めて見たチャボシライトソウの花序が紫褐色であったので、この色の印象が強く、高知県で緑白色の花序の個体に出会ったときに逆に違和感を感じた。
花被片の色が白色で多数の花を豪華につけるシライトソウにくらべ、渓流沿いの岩肌に景色にとけ込んで咲く小柄なチャボシライトソウは野性味にあふれている。
また、花被片の本数、色や長さにも地域によって違いがあるようでおもしろい。