・分布 :九州南部・種子島、台湾以南の東南アジア
・生育地:暖温帯から熱帯にかけての常緑樹林の樹幹に着生する。
・花期 :10~11月
・草丈(葉の長さ):30~80cm
・名前の由来:ヘツカラン(辺塚蘭)のヘツカ(辺塚)は鹿児島県大隅半島にある辺塚で最初に採取されたことから、ラン(蘭)はラン科植物であることに由来する。
・特徴 :常緑の着生植物。偽鱗茎は高さ4~5cmで数枚の細長い葉に包まれる。葉は厚く光沢があり、長さ30~80cm、幅1~1.5cm。花茎は葉むらの外側から腋生し長さ20~30cm、基部を膜質の鞘状葉の数枚に包まれ、
白地に紅紫色にすじが入った花をまばらに10~15個つけ下垂して咲く。苞は小さく、萼片は倒披針形で長さ3cm、側花弁は萼片よりやや短い。唇弁は暗紅紫色で、長さ約2cm、3中裂し、側裂片は立ち、中央裂片は反曲し
基部内面に短毛のある2本のひだ状隆起がある。蕊柱は濃紅紫色で葯は淡黄色である。
直径約30cmほどのシイの立枯れた樹幹の地表から3mほどの高所にあるウロに根を張り開花している個体。現地ではヘツカランはすべて樹木に着生しており、岩上や地面上では見られない。
枯死した樹木の幹や生木でも枝が枯れて幹に空いたウロなど着生していることから朽木にいる菌類との関係が深いようである。
前画像の花茎の近接画像。まばらに10個ほどの花をつけた花茎が3本下垂している。白地に紅紫色の条線が入った花は満開で花が少ないこの時期にはよく引き立つ。
枯れて倒れた大木に着生している大きな個体。大木が倒れる前は地上8mほどの高所に着生していたらしいが、横倒しになった後は地上2.5mほどの位置になり、日の当たる場所だったことも幸いし花を元気に
咲かせている。この倒木には花をつけていない個体も多数着生している。
元気なスダジイの大木の地上から4mほどに空いたウロに根を下ろし着生して、多数の花茎を下垂させている大きな株。右下にはボウランが着生している。
前画像の近接画像で、10本ほどの花を咲かせている花茎が下垂している。
スダジイの地上から約4mほどウロに着生してる。花を咲かせ下垂した花茎や果実のついた果序が下垂しているのがわかる。
ヘツカランの大株が着生した倒木の主幹の一部が、あたかも人の手によって切り取り置かれたようにいたように小さな沢筋の大石の上にあり、多数の花を咲かせていた。
本来、大木の高所にあるべき個体が偶然にしろ直接手に触れられる場所で見られるのは幸運であったが、ヘツカランにとってはあだ花であり不運である。これも自然の厳しさである。
花と蕾を合わせて11個あり、上部から6個が咲いており、下部の5個は蕾である。花茎の基部から上部に向かって開花するようである。
前画像の近接画像で花の正面と側面から見たものである。白地に紅紫色の二色の配色が渋い。
萼片の頂点を結ぶと2等辺3角形でシンメトリックであり、カンラン、マヤラン、シュンランなどの同属の花を連想する。
萼片は倒披針形で長さ3cm、側花弁は萼片よりやや短い。唇弁は暗紅紫色で、長さ約2cm、3中裂し、側裂片は立ち、中央裂片は反曲し
基部内面に短毛のある2本のひだ状隆起がある。蕊柱は濃紅紫色で葯は淡黄色である。
昨年度の花茎に結実した果実が3個あり、背景には今年の花が見える。シュンランの果実は1個であるが、形はよく似ている。本来は大木の高所から種子を撒き散らすのであろうが、地面に近いこの場所では厳しい。
谷筋の倒木や枯れた株元によく幼い株が根を下ろし着生している。しかし、低所であるため周囲の環境が変化し花を咲かせるまで成長するのは困難であるが、
ヘツカランの密度が濃いこの場所ではたくさんの種子が散布されているとも考えられる。
大株の元気な個体は今年の花と昨年度の果実を同時に見られるが、この個体は着生した木が直径30cmほどであまり大きくないこともあり株も果序がなく花茎だけで若い株のように見えた。葉もみずみずしく元気な株で地上3mほどの高さで花を鑑賞できヘツカランの魅力を堪能できた。
雑感:植物に興味を持った頃に樹上に着生するシュンランの仲間があることを知り、無性に見たくなり鹿児島県まで見に行ったことが懐かしい。自生地では倒木や枯死した
樹木の幹にヘツカランの小苗や小株は見られるが、花を咲かせるような大株にはなかなか出会なく、また出会っても大木の高所である場合が多く手が届くほどの近くで観察できる機会は少ないように思う。繁殖力は
強いようであるが、保護するためには何分にも着生するための多数の常緑広葉樹の巨樹や大木が必須条件である。