・分布 :九州(熊本、宮崎、大分)
・生育地:丘陵や山地の照葉樹林、広葉落葉樹林内や林縁
・花期 :3~4月
・草丈 :10~15cm
・特徴 : 地下の鱗茎は小型で白色の球形になり、2個の半球形の鱗片からなる。葉は5個あり、葉身は披針形から広線形で、長さ3~6㎝。下部では対生し、上部では3輪生する。茎は細く軟らかく、高さは10~15cmになる。(ここまで日本産バイモ属に共通する。)ヒゴコバイモの花は細い筒状鐘形で6個の花被片からなり、花被には赤褐色の平行条線が見られ、トサコバイモのような茶褐色の網状斑紋ではない。葯は黒紫色であり、トサコバイモと同じで、白色であるホソバナコバイモとは異なる。2016年に新種として記載された。
・名前の由来:「母貝」は地下の鱗茎が2つに分かれており、この鱗片の間から茎が出て成長することから鱗片を2枚貝に見立てて、母貝(バイモ)とよばれる。
ヒゴ(肥後)は発見された熊本県(かつての日本の地方行政区分だった令制国の肥後国)に由来し、バイモより草体が小さいことからコバイモと呼ばれる。
スプリング エフェミラル(春の妖精)とよばれる春植物の仲間で、春先に花を咲かせ、夏には地上部が枯れ、 翌年の春先まで地中の鱗茎で過ごす多年草である。
この個体は落葉広葉樹林と植林されたスギ林の中を流れる小さな沢とそれに沿った小道沿いの林床に自生していた。やや薄暗く湿り気味の環境で、スギと広葉樹の落ち葉の中から茎を伸ばし緑色の葉を展開し茎先に開花した花を付けている。2個体とも花被には白色に赤褐色の条線が入っている。
明るい黄緑色の葉は5個で、下部は対生、上部は3輪生。花は細い筒状鐘形で茎先に下向きに1個だけつける。花被は赤褐色の条線のみでスッキリして冴えている。
画面右側に緑色の葉の開花した個体があり、左側に周囲の落ち葉に紛れて目立たないが茶褐色の葉の個体が花をつけている。茶褐色の葉の個体が単独で咲いていたら目立たないので見過ごしかねない。
普通は垂直方向に下を向いて咲くが、この個体は何らかの原因で水平方向の横を向いて咲いていて珍しい。葉の色も緑色と紫褐色が混じり変わっている。
筒状鐘形の花被の先端がまだ開いておらず、これから開く個体。茶褐色の葉と条線の入った花被は渋さを感じる。
花被には赤褐色の条線だけで、トサコバイモにある網状斑紋は見あたらない。
花被の内側にも赤褐色の条線が見える。
前画像に名称を加えたものであるが、トサコバイモと同じく葯が濃い青紫色である。蜜腺は奥にあり見えない。
花被の1個が欠けた花で、淡緑色の子房の上に花柱があり、それを取り囲むように濃い青紫色の葯をつけた花糸が見える。また、花柱や花糸には短毛がびっしりと生えているのがわかる。
この花の訪花昆虫は何であろうか。
イズモコバイモは種子から開花まで4~5年要するといわれるが、ヒゴコバイモも同様であろう。この画像には1個の葉で小さいものから大きなものまで見られるが、右下の大きな葉の個体はもう数年以上経ており、来年には5枚葉を出し花を咲かせるとおもわれる。
この自生地はスギの植林地の林床で、小道の傍らに点在して生育していた。
雑感:ヒゴコバイモは2016年に新種として記載されたもので、従来はトサコバイモとされていた。ホソバナコバイモ、トサコバイモとヒゴコバイモの3種の花は共通して細い筒状鐘形であるため、種の判別は葯の色、花被の模様でおこなう。トサコバイモ(葯の色:青紫色、花被の模様:網目模様)、ホソバナコバイモ(葯の色:白色~クリーム色、花被の模様:普通は条線のみ)、ヒゴコバイモ(葯の色:青紫色、花被の模様:条線のみ)のような違いがある。この南阿蘇村の個体の花被の模様はすべて条線のみで網目模様は混じっていなかった。この場所はスギの植林地であり、将来は伐採されこの場所での絶滅が危惧される。