・分布 :本州(宮城、福島、千葉、島根)、九州(熊本、大分、鹿児島)、朝鮮半島
・生育地:河川、湖沼、溜池、用水路や水田などに生育する。
・花期 :5~8月
・草丈(花茎):15~40cm
・名前の由来:バイカモ(梅花藻)は花が梅の花に似て、水中に生える藻であることに由来し、さらにバイカモと同様の花を咲かせるが、
その花が小さく、草体も小さいことからヒメ(姫)がつけられヒメバイカモ(姫梅花藻)となった。
・特徴 : 多年生の常緑の沈水植物(水田に生育する個体は越年生)。バイカモより小形で葉柄の長さ4~12㎜、葉身は細裂し扇形で長さ1~3cm。花は沈水葉と対生して咲き、径6~10㎜、白色で中心部は黄色、花柄は1~3cmで
バイカモより小さい。果実期に花柄(果柄)がのびるバイカモと異なり、ヒメバイカモの花柄は伸びない。花弁は5個、狭倒卵形、長さ5㎜、基部に0.2㎜の蜜腺があるが小さなへこみ状で退化的である。
痩果は無毛(バイカモは有毛)。
熊本市は阿蘇からの豊富な地下水が湧水する場所で市民の生活水や周辺の田畑の涵養水としても地下水脈が利用されている。ヒメバイカモは地下水が湧出して海抜約10mたらずの都市部湧水湖である
上江津湖に流れ込む小さな水路に自生していた。湧水は清らかで、落ち葉やクレソンが傍らに見える。
水路の水位は5cmほどで流れは緩やかで、水温は一年を通じて18℃前後と変動が少ない。湧出量(水量)は水田涵養と梅雨期の降雨により多少の変動するようである。
中国山地の標高330mほどの盆地にある山里の田んぼの農業用水路に自生している個体。一級河川高津川の源流部にあたり、その一部を涵養水として利用しており、生活排水がほとんど含まれておらず、水はきれいである。
水路の川底は小さい礫が混じった砂地で、水位は田植え時期から稲の生長期の8月頃までは少し高く流量も多いと思われるが、撮影時の水深は4cmほどであった。この時期には稲刈りは終わっていたが、
田んぼの用水の流れ込み口付近はしめっており、枯死したり、枯れそうなヒメバイカモも見られた。この水路の自生の風景は趣がある。
前画像の株の全体像。小さな花が複数個咲いている。
2個の花が咲いているが、上の花のほうが開花は早く、下の花は開花したばかりである。花径は10㎜ほどでバイカモより小さい。名前の由来のウメの花と同じ5個の花弁、複数の雄しべがあるが、雌しべのつくりが異なる。
萼片は5個で緑色。花は沈水葉と対生して咲き、白色で中心部は黄色、花弁の基部には蜜腺があるが小さなへこみで退化的である。キンポウゲ科の特徴である多数の雄しべと多数の雌しべがある。
海抜25mほどの河川の中流域の本流から少し外れたわんどに自生している個体。このわんどの川底は砂地で一部湧水も見られ、ヒメバイカモの自生している場所は水深約30cm、水の流れは緩やかあった。
前画像の左側半分の近接画像。淡緑色の沈水葉の植物はカワジシャである。
前々画像の左側半分の近接画像。開花時期で花が咲いていてもよいはずであるが、水位が高く、流れが速いためか沈水葉の茎が水面に浮かびあがれず水上花であるヒメバイカモは花が見えない。
よく見ると水中の茎には蕾がついており、今後水位が減り流れが緩やかになれば花が咲くと思われる。
同じわんどの中に生育する2個の株であるが、水深30cmほどでも流れが速いために茎葉が水面に浮かんでいない。数日前に雨が降り水位が増し流れが速くなったようである。
この自生地の周辺も以前はヒメバイカモの生育に適したわんどがあったようであるが、現状はヨシが繁茂して環境が変化している。
同じわんど内の水の流れのないよどんだ場所に流れ着いた個体。増水して、根こそぎ抜けこの場所に浮き漂っており、草体に傷みが少ないので、直ぐ近くに生えていたようである。
草体はバイカモにくらべて小形で、葉柄の長さ4~12㎜、葉身は細裂し長さ1.5~3cmである。
細裂した葉と白色で中央が黄色の花の対比がおもしろい。
水路の縁に生育する個体。何気ない画像であるが、この周辺も耕作破棄地が増え、用水路の手入れが行われなくなると将来が危ぶまれる。
雑感:ヒメバイカモの西日本の自生地を数か所訪ねたが、バイカモと比べて生息範囲が狭く小規模で、人里近く住民の生活の影響受けやすいことから、今後の生育が危惧された。地球温暖化による河川増水による環境変化、水質汚濁やオオカナダモなど帰化植物との競合、河原のヨシの繁茂、耕作破棄による用水路や田んぼの荒廃など悪い条件ばかりである。実際に河川に自生地の看板があったが、洪水で川底や流れが変化しまったく見られなかった場所もあった。この植物もビオトープみたいな保護活動が必要な段階にきているかも知れない。人里の澄んだ水が流れる用水路でみるヒメバイカモは小さくて可憐である。