・分布 :北海道、本州、四国、九州、 ウスリー、中国東北部、朝鮮半島
・生育地:池沼や水路、排水が悪く水が溜まった耕作破棄地
・花期 :7~10月
・草丈:5~8cm
・名前の由来:ヒメビシ(姫菱)のヒメ(姫)は小形であることから。ヒシ(菱)は古語の「拉(ひし)ぐ」が由来、「拉ぐ」とは「押しつぶす」の意味で
実の形が押しつぶされたような平べったい扁平であることからきている。また、漢字のヒシ「菱」は漢名(中国語;菱角)からきている。
・特徴 :一年草の浮葉植物。浮葉は広卵状菱型、径1~2cm、上部の縁はあらい鋸歯となり、表面に光沢があり、葉柄の中央部は長楕円体状にふくらみ浮力を生む。
花は紅色を帯びた白色か白色、径6~8㎜。果実は堅果で倒三角形で4個のトゲがある。ヒシ属の他種にくらべて葉や果実が小さく浮葉や花柄・萼はほとんど無毛である。
水深約50cmほどの水路に根を下ろし根茎の先端に浮葉を展開し小さな花をつけている個体。
周囲を150mほどの里山に囲まれた小さな沼を含む内陸湿地で以前は水田として耕作された場所であるが現在は耕作破棄地となり公園となっている。地形的に周囲に降った雨はそのままこの湿地に直接、あるいは
湧水として流れ込むため自然度の高い湿地で地下には泥炭層をともなっている。この個体は水深5cmほどの湿地化した水田の耕作破棄地に生育している個体である。
茎先から放射状に浮葉を展開している。浮葉は広卵状菱型、径1~2cm、上部の縁はあらい鋸歯となり、表面に光沢がある。花は中央の茎の先端部の葉腋に単生する。淡い桃色に縁どられた白色の小さな花は緑の葉の囲まれて精いっぱい自己主張しているように見える。
以前に、稲作用の用水として利用された停水に近い緩やかな流れの幅約120cm、深さ約50cmほどの水路で、両側の耕作破棄された水田にはアシが繁茂している。
ヒメビシは群生した一塊の集団で水路の所々に点在していた。
前画像の手前右岸近くのヒメビシの群生。この付近はヒメビシだけの群生で他の水生植物は見られず、ヒメビシに適した環境と思われる。
一面に5cmほどの水が溜まっている水はけの悪い耕作破棄された水田があり、その中でヒメビシが群生していた。
浅い場所であったが小形のヒメビシは案外とこのような浅い場所を好むように見えた。
上から見た花の近接画像。花は両性で4数性で雄しべは4個、雌しべの花柱は1個で子房は中位である。4個の花弁は平開せず、ふつうは自家受粉する。
萼は短い筒部と4裂片からなり裂片は花後も残存してトゲとなる。花弁は4個で萼筒上につく。
この耕作破棄田には今は数㎝の水位しかなく、群生してあたかも陸生しているように見えるが若い成長時期はもう少し水位が高かったように思われる。
前画像の手前の一株を裏返して浮力を生む葉柄中央部の長楕円体状のふくらみを確認したもの。葉柄の中央部ではなく先端部にふくらみは位置しふくらみの端から直ぐに葉を展開しているのがわかる。
果実は熟すと黒色の平べったい堅果で全幅約2cmと小さく、4本のトゲがある。このトゲの役割は魚や水鳥などの外敵に食べられないためと水底での果実の固定の働きであろうか。
4本のトゲが確認できるように果実を斜めに傾けた画像。上方の2本のトゲ(上刺)は太く斜めに伸びているが、下方の2本(下刺)は短く互いに平行に下垂している。
果実を横にして下方の2本のトゲ(下刺)を確認したもの。鋭いトゲが2本下垂している。
用水路の岸辺の水深5cmほどの場所に生育している個体。小さな桃色の花が一つ咲いている。
雑感:昔はヒシ科ヒシ属であったが、ミソハギ科ヒシ属に移行した。ヒシ、オニビシやコオニビシなどは富栄養の沼などで繁茂する強健種であるが、ヒメビシは同属の中では最も環境の影響を受けやすい植物で山間の谷間にある貧栄養の浅い池沼や水路に限定されるひよわな植物の印象がある。1年草であるため環境の変化に弱く、以前に観察した場所に数年後に訪れると絶えている場合が多い。同属の他種とは葉や果実が小さいことと果実のトゲが上下に2個づつ計4個あることで区別できる。(ヒシは2個、オニビシは下向きのトゲが4個、コオニビシはヒメビシと同じように4個あるが果実が大きい)