ヒナラン(雛蘭)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)ヒナラン

・分布 :本州(茨城、栃木、静岡以西、四国、九州 、朝鮮半島、中国、台湾
・生育地:暖温帯の樹林下の岩上や崖地。
・花期 :4~6月
・草丈(花茎):5~15cm 

・名前の由来:日本産のラン科の中では花がとても小さいことから、小さいという意味の雛(ヒナ)にちなみヒナラン(雛蘭)となった。

・特徴 :茎は地下に長楕円体(紡錘形)の肥厚するイモ(根)から出て斜めに立つ。葉は茎の下部に1個つき長楕円形~広披針形、長さ3~8cm、幅1~2cmで、表面はやや光沢があり、 裏面は帯白、先はややとがり、基部は茎を抱く。茎の上部に小さな淡紫色の花を10~15個、一方向に偏ってつける。花は小さいながら、開花すると唇弁が目立つ。苞は卵形、 長さ3~5㎜、背萼片、側萼片と側花弁は長さ約2㎜、唇弁はくさび形卵形で長さ約4㎜で3裂し中央裂片が大きく、距は細くて長さ1~2mmで子房に接する。蒴果。

生育環境    (2014/7/4 広島県 北広島町)

中国山地を源流とする谷川が侵食してできた石英斑岩や流紋岩質凝灰岩からなる標高約500mほどの渓谷の崖地の岩場に生育している。

全体像    (2014/7/4 広島県 北広島町)

この崖地は通風のある明るいやや湿り気のある急峻な岩場である。スゲ類の中に紡錘形の根をおろし、葉は茎の基部に1個つけ、茎の上部に淡紫色のとても小さい花を15個ほどつけている。 花は下部から上部に咲き上がるが、この個体はまだ咲き始めで上部は蕾である。

低地の個体  (2023/6/23 広島県 安芸高田市)   

中国山地の中央に位置する小さな峡谷内の標高約150mの崖地に生育する個体。ここは穿入曲流(穿入蛇行)という河川侵食の生じた場所で、植生に富み、 蘚苔類や地衣類の種類が多い。崖の上部は常緑のカシ類で少し日陰になるが、標高が低いためか、開花が進みほぼ満開である。


 点在する個体。 (2014/7/4 広島県 北広島町)    

高田流紋岩の断崖の岩場に点在するヒナラン。岩肌の亀裂や凹凸を利用してコケ類やシダ類と共に生育している。開花している個体や葉だけの個体もみえる。

 ミヤマウズラとヒナラン  (2014/7/4 広島県 北広島町)  

前画像の中央部の近接画像。葉だけのミヤマウズラと蕾をつけた5個のヒナランがみえる。

 コケの中のヒナラン    

垂直の岩肌に生育しているコケの中に根を下ろし花をつけている個体。厳しい環境であるが、野生のたくましさを感じる。

林下の崖地の個体  (2023/6/23 広島県 安芸高田市)    

やや緩い傾斜の林下の崖地に咲く個体。明るい垂直の崖地に生育する個体にくらべて葉幅が小さく、花数も7個と少ない。

茎の上部の花 (2023/6/23 広島県 安芸高田市)  

前画像の茎の上部の近接画像。淡紫色の開花した花が5個と2個の蕾で、矮小な花ながら、一生懸命に存在をアピールしているようでほほえましい。 

花の名称  

花は小さいながら、開花すると唇弁が目立つ。唇弁の基部は白色、上部は淡紫色で3裂し中央裂片が大きい。 

マルバマンネングサとヒナラン  (2014/7/4 広島県 北広島町)     

花の背景には乾燥に強いマルバマンネングサがあり、通風のある乾燥する岩場であることがわかる。

崖地の岩場の個体の花  (2014/7/4 広島県 北広島町)     

明るい崖地の岩場に生育する個体の茎の上部の近接画像。淡紫色の花が15個あり、開花は4個、蕾が11個。この個体は開花した花の唇弁の中央裂片は長く、側裂片は小さい特徴がある。

葉      

葉は茎の下部に1個つき長楕円形~広披針形、長さ3~8cm、幅1~2cmで、表面はやや光沢があり、 裏面は帯白、先はややとがり、基部は茎を抱く。

崖下の個体  (2014/7/4 広島県 北広島町)  

この個体は崖地の下の落葉がつもる礫に根を下ろしている個体。崖地の上部の岩場に育つヒナランの種が落下して発芽、成長し花をつけた個体で、たくましいが、周囲の植物が成長すれば消える運命にある。
雑感:谷筋の崖地の岩場に咲くランはウチョウラン、イワチドリやセッコクなどがあるが、ヒナランの花はずぬけて小さい。また、大きな1枚の葉と細長い茎先に小さい花を多数つける草姿も独特で存在感がある。 淡紫色の花は小さいながら、花粉媒介者を誘う距や唇弁もふつうのランと同じようにあり、はたしてどんな小さな昆虫が訪花しているのか、見てみたい。