イワギリソウ(岩桐草)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)イワギリソウ

・分布 :本州(近畿地方以西)、四国、九州 
・生育地:岩峰や尾根(主に集塊岩)の陰地の岩壁。
・花期 :5~6月
・草丈(花茎):10~20cm 

・名前の由来:イワ(岩)は岩場に生え、白い軟毛のある葉や花の形状がキリ(桐)を連想させることからイワギリソウ(岩桐草)となった。

・特徴 : 多年草。短い根茎に葉が束生する。葉は長い柄があり、葉身は厚く卵状円形で、長さ3~15cm、幅2~10cm、先は鈍くとがり、縁にはふぞろいな波状の鋸歯がある。 葉腋から数本の花茎を垂らすように伸ばし、散形状の集散花序に多数の紅紫色の花をつける。花茎の長さ10~20cm、葉や花茎には密に白色の軟毛がある。小花柄の基部には長さ3~6mmの広線形の苞がある。 花には細い長さ2~4cmの花柄があり、萼は鐘形で深く5裂し、裂片は狭披針形。花冠は紅紫色、長さ約2cm、左右相称で基部は細い筒状、先は唇形、上唇は2裂、下唇は3裂する。 雄しべは2個で花筒の側方の上部につく。仮雄しべは3個で、花筒の上側に1個、下側に2個ある。子房は披針形、花柱は1㎜、柱頭はへら状で2裂する。蒴果は広線形で下垂し長さ2.5~4.5cm、胞背で2裂する。

生育環境     (2025/5/25 大分県 豊後高田市)

標高約300mの集塊岩(凝灰角礫岩)の岩峰の明るい陰地の岩壁に生育している。

咲き始めの花     (2025/5/25 大分県 豊後高田市)

苔むした岩壁に生育する咲き始めたばかりの個体。やや明るい場所で葉が黄緑色である。

小さな群生     (2025/5/25 大分県 豊後高田市)

垂直に近い断崖の岩壁に小さな群生状態で生育しているイワギリソウ。急峻な岩壁に着生するように根茎を下ろしているため、 葉は水平ではなく岩壁にへばりつくように傾斜して展開し、葉腋から伸びる数本の花茎も岩壁に対して垂直に張り出し伸ばしているように見える。


サツマイワギリソウ       (2025/5/19 鹿児島県 南さつま市)

     

鹿児島県の約300mの集塊岩の岩場に咲く個体。別種として扱われることもあるようであるが、ここではイワギリソウと同種としている。


 サツマイワギリソウの花    

イワギリソウの花は地域によって上唇や下唇の形状や色彩に差異がある。サツマイワギリソウの花は濃い紅紫色一色で、下唇の3裂片も広く先がとがり 他の地域の花と比べて優雅な感じがする。

 ウンゼンマンネングサとイワギリソウ (2025/5/25 大分県 豊後高田市)    

苔むした岩壁に咲くイワギリソウ。周辺にはウンゼンマンネングサ、カタヒバやイワヒバなど崖地の植物がみられる。

 花   (2025/5/25 大分県 豊後高田市) 

淡紅紫色の花冠の上唇に濃い紅紫色の斑点が入り、可憐である。

散形状の集散花序  (2025/5/19 鹿児島県 南さつま市)  

花の付き方は少し複雑で花茎の上部で散形状に複数の花柄を伸ばすが先に1個の花をつけるものと花柄の途中から分枝して小花柄をだして花をつけるものがある。

花冠   (2025/5/19 鹿児島県 南さつま市)  

左右相称の均整のとれた花冠で薄いピンク色がなんともいえない味がある。

名称      

花冠は長さ約2cm、外面に軟毛がある。萼は鐘形で深く5裂し裂片は狭披針形、長い褐色の毛が密生する。雄しべは2個で花筒の側方の上側につき花冠の外には出ない。

仮雄しべと柱頭  (2025/5/25 大分県 豊後高田市)

イワギリソウは雄しべのほかに仮雄しべを3個もち、柱頭はへら状で2裂する。

葉、花茎、蕾   

葉柄は長さ3~10cm、葉身は卵状円形で厚く縁にはふぞろいな波状の鋸歯があり、長さ3~15cm、幅2~10cmで有毛である。花茎は10~20cmで白毛が密に生える。 

果実   

先に咲いた花は結実して広線形の蒴果をつけている。蒴果は長さ2.5~4.5cm、幅3~4㎜、成熟すると2裂する胞背裂蒴果である。 

岩壁の一画   

6株ほどの開花したイワギリソウと周辺にはヒトツバ、カタヒバ、マルバマンネングサ、カラムシなどがある。

花の側面  (2025/5/19 鹿児島県 南さつま市)  

萼に包まれた花筒は下垂し、先の花冠は横に曲がり岩壁に平行になるように開く。

カタヒバとイワギリソウ  (2025/5/25 大分県 豊後高田市)  

岩壁の環境も少しずつ変化して、ここでも競合するカタヒバが優勢であるようにみえる。
雑感:イワギリソウの分布の中心は四国のようであるが、瀬戸内海を隔てた広島・岡山には自生していない。しかし、その周辺の県には生育しており、九州でも大分・鹿児島だけに自生し、他県には見られないが、 どうしてこんな分布になったのか不思議である。厚手の黄緑色の葉や紅紫色の多数の花をつける草姿は魅力があり採取されたことも一因であるかもしれない。