イズモサイシン(出雲細辛)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)イズモサイシン 

・分布 :本州(群馬、兵庫、岡山)、九州(福岡) 
・生育地:山地の広葉樹林の渓流や小川に沿った崖地や林床に生える。
・花期 :3~4月
・草丈:10~15cm

・特徴 :秋に落葉する多年草。根茎は地上這うが節間は短く、先端部に毎年1~2枚の葉をつける。葉は葉柄が長く9~12cmになる。葉身は広卵形で長さ6.5~11cm、 幅5~9cm、基部は心形、先はとがり、表面は白斑がなく、葉脈に沿って軟毛を散生する。2枚の葉の間に頂生して1個の花をつける。花柄は長さ2cm、萼筒は丸みのある 壺型で長さ7.5~10㎜、直径10~14㎜。喉部は狭くなり、直径5~7㎜で萼筒の約半分である。萼裂片は広卵形で長さ5.5~9㎜、平開し先がとがり。表面に短毛が生える。 花柱は6個、雄しべは12個、子房の位置は上位である。 
・名前の由来:島根県の出雲(イズモ)地方中心に局所的に分布する細辛(サイシン)の仲間であることに由来。

長い根茎を岩上に這わせた個体  (2024/03/27 島根県 奥出雲町)

渓流沿いの崖地の岩上に約10cmの年輪の刻まれたような短い節間の根茎を伸ばし、先端部の2本の葉柄の間から約2cmの花柄を伸ばし開花している。

葉柄の長い個体 (2022/04/23 島根県 奥出雲町)

 崖地の斜面に自生している個体で、花は目立たない。本種の葉柄は普通9~12cmであるが、この個体の葉柄も10cm以上である。


葉の形状 (2022/04/23 島根県 奥出雲町)

 葉身は広卵形で、長さ7~11cm、幅5~9cm、基部は心形、さきはとがる。

生育環境  (2022/04/23 島根県 奥出雲町)

日中は数時間しか、木漏れ日が差し込まない谷間を流れる渓流に沿った湿った崖地にウワバミソウやシダ類と生育している。

岩棚の個体 (2022/04/23 島根県 奥出雲町)

湿った場所が好きなジャノヒゲ、ウワバミソウやシダ類が見られる崖地の岩棚の上に自生している。

花の拡大図 (2024/03/27 島根県 奥出雲町)

萼裂片は広卵形で5.5~9㎜、平開して先はとがり表面に短毛が生える。花柱は6個、雄しべは12個である。

萼筒の側面 (2022/04/23 島根県 奥出雲町)

萼筒は少し縦に長い壺形で、喉部にあたる萼口が急に細くなり、萼筒の径の半分であることがわかる。萼筒の外側の色は紫色を帯びたオリーブグリーン色である。

紫色が強い萼筒 (2024/03/27 島根県 奥出雲町)

この花も喉部の径が萼筒の径の半分ぐらいであるが、萼筒の外側の色は紫紅色である。

葉の表面の毛 (2024/03/27 島根県 奥出雲町)

展開して間もない新葉であるが、葉の表面や葉脈に軟毛が生えている。

大株 (2024/03/27 島根県 奥出雲町)

たくさんの花をつけた大株であるが、葉を展開すると茎元にある花は葉の陰になり見られなくなる。この株の花は萼筒の基部の白い模様がよく目立つ。

長い根茎を岩上に這わせた個体 (2024/03/27 島根県 奥出雲町)

最初に取り上げた画像の違う方向から見た画像である。長く伸びた根茎の先につく花と展開したばかりの黄緑色の新葉が新鮮である。

崖地の個体 (2024/03/27 島根県 奥出雲町)

 この個体は根茎を岩の上を這わせて、先端部の葉と花は岩から乗り出している。
雑感:もともとウスバサイシンと同種と取り扱われていたが、2007年にイズモサイシンとして新種記載された経緯がある。同時期にアソサイシンも新種記載されているが、カンアオイやサイシンの仲間はその繁殖形態からか地域性が顕著で、イズモサイシンもその例なのかも知れない。同郷にイズモコバイモがあるが、これは外見から他のコバイモとは容易に判別できるが、本種はウスバサイシンとよく似ている。本種はウスバサイシンにくらべて萼筒が少し長く、また、本種の萼口の開口部の径が萼筒の径の半分程度であるのに対し、ウスバサイシンでは半分以上であることが識別点となっている。春早くに、渓流沿いの崖地に年輪を刻んだような根茎を長くのばしてその先に地味な花をつけて葉を展開する株を見るとわび・さびの感情がわく。