ジンリョウユリ(神領百合)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)ジンリョウユリ 

・分布 :本州(静岡)、四国(徳島) 
・生育地:蛇紋岩地の低木が混じるような草地。
・花期 :5~6月初旬
・草丈:20~60cm

・特徴 :ササユリの変種で全体が小形で葉が細い。葉柄はある。ジンリョウユリの葉は披針形で、葉幅は0.6~1.5cmであるのに対してササユリの葉幅は1.5cm~4cmとジンリョウユリの葉幅が著しく細い。 花は茎先に1~3個つき、横からやや下向きに咲く。ササユリの花色はふつう花被片全体が淡いピンク色(撫子色)~ピンク色であるが、ジンリョウユリではふつう花被片の基部が濃いピンク色で その先はピンク色である。花被片の先はよく反り返り、花被片の長さはジンリョウユリが6~8cmであるのに対してササユリは10~14cmで長く、ジンリョウユリの花冠がササユリより小形である。
・名前の由来:和名のジンリョウ(神領)は基準標本産地の神山町神領の地名にちなむ。「ユリ」の呼びかたについては茎が細く花が大きいため、風により揺れやすく古来「揺すり」とよばれ、それが転じてユリとよばれるようになった。また、ユリ(百合)の球根は鱗状鱗茎で、百枚(多数の意味)の鱗片が重なり合っていることから、百合をユリにあてた。

生育環境    (2024/5/26 徳島県 神山町 )

蛇紋岩の低木が点在する草地に生育する草丈40cmほどの個体。周囲にはササやススキなどが見られ、まさに紅一点の感がある。

花冠   

前画像と同じ個体の花冠を接写したものである。開花したばかりのピンク色の花で葯の花粉はまだ飛散しておらず、柱頭にも花粉は着いていない。6個の花被片の先端は反り返り、花被片の基部は濃いピンク色である。


全体像  (2024/5/26 徳島県 神山町 )

開花したばかりの草丈40cmほどの個体で花序の色は淡いピンク色であるが、花序の基部は濃いピンク色である。9枚の葉が間隔をあけて互生しているが、披針形で細く覆輪が入っている。周辺にはイワガサの葉が見える。

2本立ち

草丈が約40cmと約25cmの個体。両方ともに咲き始めであるが、大きい個体の花序の色が少し濃いように見える。描きたくなるような美がある。

3本立ち

草丈45cmほどの個体2株と30cmほどの個体が1株が開花しているが、花色の濃淡が微妙に株により違っている。

蕾がはじけたばかりの小形の個体

自生地には多くの個体が開花していたが、この個体は草丈が最小に近いもののひとつで、20cmほどである。前方に結実したヤマトキソウがあるが、これと比較できるほど小形である。

斜め上から見た個体   

前画像の個体を斜め上方向から見たもの。蕾からまだ花被片を開いたばかりで先は反り返っておらず、小形の株のためか細い葉を4枚しかつけていない。

ササユリ     (2019/6/19 広島県 庄原市 )

比較のための一般的なササユリの花と葉の画像である。中国山地の標高700mほどの高原に自生している個体。茎も太く、葉幅も広く、花被片基部の顕著な濃いピンク色も見られない。

上方から見たジンリョウユリ 

傾斜地に生育している個体を後ろ上方から見たもの。茎は細く紫褐色で、5枚の細い葉には短い葉柄がある。周辺にはタチシオデやススキが見られる。

蕾 (2024/5/26 徳島県 神山町 )  

横方向から見たまだ蕾の個体。草丈30cmほどで葉は4枚、周辺にはイワガサやサルトリイバラが見られる。蕾は色づき膨らんで、明日にも開花しそうである。

幼葉 (2024/5/26 徳島県 神山町 )  

1年目の幼葉のようであるが、開花まで4年以上かかるようである。

集団 (2024/5/26 徳島県 神山町 )  

石垣に群れて咲いている個体。ササユリは二次林の林縁、山道の路傍や山里の畑地の畔際などでよく見られ人の生活とかかわりあいが深いが、ジンリョウユリも同じようである。

葉が細い個体   (2024/5/26 徳島県 神山町 )

 2本立ちの開花した個体であるが、両方ともとくに葉が細いように見える。
雑感:古来、ユリは東日本(東国)ではヤマユリで、西日本(西国)ではササユリを指すらしい。野山でササユリの花に出会うと存在感に圧倒されるが、さらにジンリョウユリのように草体が小形で、清楚な艶やかさをもつ花であればなおさらであった。撮影した場所は自生環境を保った保護地であるが、乱獲の他にササユリとの交雑も心配され純粋種の維持の大変さを感じた。また、広島県では蛇紋岩地の山に生育するヒメユリがジンリョウユリと同じように植物体が小形であるような特徴を持っているがこちらもヒメユリの変種扱いしてもよいのではと思った。