キバナノアツモリソウ(黄花の敦盛草)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)キバナノアツモリソウ

・分布 :北海道、本州(東北地方南部~中部地方)、カムチャッツカ半島・アリューシャン列島~アラスカ 
・生育地:亜寒帯~冷温帯の落葉樹林下や草原
・花期 :6~7月
・草丈:10~30cm(花茎含む)

・特徴 :地下茎は長く横に這い栄養繁殖を行う。茎は葉や子房とともに腺毛がある。葉は互生であるが、接近して対生にみえ、長さ10~15cm、幅4~10cmほどである。茎頂に淡黄緑色の花を横向きに1個つける。 花は径3cmほどで背萼片は広卵形で外側は白色、内側は淡緑地に斑紋があるものが多い。側萼片は合着して1個の楕円形の合萼片となり先端は2裂する。側花弁は斜卵形で先が一度くびれて肉厚の円筒になる。袋状の唇弁は 広く開口し側花弁とともに茶褐色の斑点がある。
・名前の由来:キバナ(黄花)は花の色が黄色系にみえることから、アツモリソウ(敦盛草)は唇弁の形が源平の戦いで平敦盛が鎧の上に背負っていた母衣(ほろ)に似ていることが由来である。

生育環境    (2014/6/28 長野県 戸隠 )

標高2000mほどの尾根部の林縁に生育していた。晴れれば明るい場所であるが、霧が多い場所のようでこの日も雲霧がかかり晴れたり曇ったりの天気であった。

横方向からみた花の全体像  (2014/6/28 長野県 戸隠 ) 

口を広く開けた唇弁が特徴的で、横顔が顎が出た三日月を擬人化したものによく似てユーモラスである。


正面から見た花の近接画像   (2014/6/28 長野県 戸隠 )

唇弁や背萼片も特徴的であるが、両腕を広げたように見える側花弁も造形的におもしろい。

少し日陰に咲く個体

半日蔭の場所に咲く2個体で、唇弁や側花弁の茶褐色の斑点が明瞭である。2枚の葉だけで花茎を持たない個体も多く見られる。

ササや小低木との競合

キバナノアツモリソウの地下茎は細長く横に這い、節々から根をだして増えるが、ササや他の植物との生存競争も激しいようである。

背萼片の外側と唇弁の開口部 

背萼片の外側は白色で、袋状の唇弁の広い開口部に雨水やゴミなどが入らないように覆っているように見える。

群生 (2014/6/28 長野県 戸隠 )  

この画像の中に19個の個体が花をつけて群生しているが、すべての個体の花が同じ方向を向いて咲いているのが興味深い。ヒマワリと同じく東向きであると推測される。

後方から見た花   

花をつけている5個体とも同じ方向を向いているため、後方から見た花の背萼片の外側の白色と基部に茶褐色の斑点があるのがわかる。

蕊柱(仮雄しべ) ((2014/6/28 長野県 戸隠 )  

仮雄ずい(仮雄しべ)にも茶褐色の斑点があるのがわかる。柱頭は仮雄しべの裏側(下面)にある。

側萼片 (2014/6/28 長野県 戸隠 )  

花を後方から見たもので、側萼片が合わさった淡黄緑色の合萼片の先が2つに分かれている。

正面からの花の構造 ((2014/6/28 長野県 戸隠 )  

袋状の唇弁に入ったマルハナバチなどの訪花昆虫は側花弁と唇弁の基部と雄しべの葯に囲まれた狭い隙間を通り粘着力のある花粉塊を背中につけて脱出する。さらに、この背に花粉塊をつけた訪花昆虫が違う花を訪れたとき同じように袋状の唇弁に入り脱出するときに仮雄しべの裏側にある柱頭に花粉塊をこすり付けて受粉する。なんとなく非効率な受粉システムと思えるが、花の形状や色彩までも長い年月をかけて訪花昆虫のために進化させた ことを考えるとロマンがある。

斜め後方からの花の構造 (2014/6/28 長野県 戸隠 )  

花柄子房はねじりがなくストレートである。

色彩   (2014/6/28 長野県 戸隠 )

 キバナノアツモリソウの花は花粉媒介昆虫を呼び寄せるため淡黄緑色をベースに茶褐色の斑点を配置しているが、斑点をともなわない赤紫色系単色のアツモリソウの花とは大きく異なる。 やはり、種によって特定の花粉媒介昆虫が存在するようである。
雑感:キバナノアツモリソウの花を見ると洋ランのパフィオペディルムを思い浮かべる。食虫植物のような口を開けた唇弁と黄色地に褐色の模様がある花は自生地で見ても和風な 雰囲気より、現代的な洋風な感じがする。西日本育ちの身としては、寒い地方の高嶺の花であり、初見で、群生状態で見ることができて幸運であった。