・分布 :宮崎(固有種)
・生育地:湿気のある渓流沿いの崖地の岩壁から下垂して生育する。
・花期 :9~10月
・草丈:50~100cm
・名前の由来:ホトトギス(杜鵑草)は花被片の斑点を鳥類のホトトギスの胸の斑点に見立てたことによる。そこでホトトギス(杜鵑草)の仲間で、花が黄色で、茎が葉を突き抜けているように見えることから
キバナノツキヌキホトトギス(黄花の突抜杜鵑草)となった。
・特徴 : 多年草。茎には毛がなく、葉の下部を突き抜ける。葉は披針形で8~17cm、基部は茎を抱いて合着して、茎が突き抜けているように見える。黄色の花が葉腋に1個ずつ付き上向きに咲く。
花柄は花よりも短く長さ5~10㎜、腺毛が密生する。花被片は長さ1.3~1.5cm、斜めにやや広く外側に開き、黄色で内面に赤紫色の斑点がある。6個の花糸は花柱を包むように寄りそって束上に立ち
おのおのの上部で外反して開き先端に葯を丁字につける。花柱は3裂し、さらに裂片は2裂する。花柱には小さな球状の突起がある。子房上位で蒴果。
尾鈴山は火砕流が高温のまま堆積し圧縮され固まった溶結凝灰岩やマグマが地中でゆっくり冷え固まった深成岩の花崗閃緑岩などの浸食されにくい硬度の高い岩石で構成されている。
このため降水量の多い地域であることから、急峻な深い谷や瀑布群が出現した。キバナノツキヌキホトトギスはこの急峻な谷を流れる標高約500mほどの渓流の崖地に自生している。
茎は50~70cmで、垂直に近い崖地の苔むした岩壁から垂れ下がっている。葉は互生し披針形で長さ8~17cm、茎は葉の基部で少し折れ曲がりながら直線状になる。上部には
ケイビランの葉が見える。
キバナノツキヌキホトトギスは垂直に近い岩壁から下垂して育つのに特化した植物で、水平に近い岩上には下垂できないため生育できない。群生している環境は渓流沿いの半日蔭の垂直に近い崖地の
湿り気のある岩壁で、その上部の急斜面は常緑広葉樹の林である。
苔むした垂直の岩壁に生育する開花している一株。花は茎の先端から基部に向かって開花し、先端部は花が咲き終わり結実し、茎の中ほどは開花中、下部はまだ蕾である。
やや暗い垂直の岩壁に群生して生育する個体。開花していない葉だけの時期に見るとこのような暗い環境を好むシダ類と間違えそうであるが、開花すると黄色い花が暗い環境でよく目立ち、
花粉媒介昆虫にアピールしているのがわかる。
やや暗い岩壁に生育する個体。2個の茎が下垂しているが、左側の個体は葉だけで花をつけておらず、右側の個体は茎頂部に開花したばかりの花1個と蕾1個の計2個のわずかな花しかつけていない。
全体的に暗い場所に生育する個体のほうが花付きは少ない傾向が見られる。
前画像の花と蕾がある茎頂部の近接画像。濃緑の葉と開花したばかりの黄金色の花が調和してきれいである。
前画像の花の近接画像。内花被片3枚と外花被片3枚ともに同形で均整がとれ、花被片内側の赤紫色の斑点がよいアクセントになり美しい。
花柱は黄色で3裂し、裂片はさらに2裂する。先が柱頭になる。雄しべの花糸は白色で6個、花糸の束状に立つ基部には赤紫色の斑紋があり、葯は外向きである。
花の側面の近接画像。花柄は花よりも短く長さ5~10㎜、腺毛が密生する。茎は葉の下部を突き抜け、その葉腋に花をつけている。
渓流の本流より30mほど高い崖地の小沢の岩壁に生育する個体。雨が降ると雨水が集まり小さな滝状になる急峻な岩場である。乾季は乾燥し、雨季は水に打たれる厳しい環境で葉は損傷が激しいが、たくましく花をつけ野性味たっぷりである。
前画像の花の近接画像。花は1日か、2日しかもたず結実が早い。
半日蔭の湿った垂直に近い岩壁を好むのは他の山の渓谷や谷間でもよく見かけるイワタバコである。ここでもキバナノツキヌキホトトギスの自生する周辺にはイワタバコが必ずといっていいほど見られる。
蕾の近接画像。茎は葉の基部を突き抜け、茎には毛はない。蕾や花柄には毛が密生している。葉の基部が茎を巻くのは増水時の葉が茎からちぎれないために進化したとの説もある。
先がとがった三角柱状の蒴果。熟すと先端が3裂する。
大きな滝の滝つぼに近い崖地に咲く個体。崖地の上部で湿気が少ないため、1株だけのようである。
雑感:尾鈴山は非常に硬い岩石である珪長質火成岩類で構成されているため長年の浸食により深い急峻な谷や断崖絶壁をともなう尾鈴山瀑布群とよばれる滝がつくられた。キバナノツキヌキホトトギスは同じ黄色い花を咲かせるキバナノホトトギスやタマガワホトトギスとは大きく形態が異なり、この急峻な谷の湿った崖地の岩場に下垂して自生できるように進化してきた唯一無二のホトトギスの仲間である。そして、渓流沿いの湿った崖地の岩場から下垂して黄色い花をつけた様は幽玄でもある。