キリシマエビネ(霧島海老根)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)キリシマエビネ 

・分布 :本州(紀伊半島)、四国、九州、台湾、朝鮮半島、中国南東部 
・生育地:暖温帯の渓谷沿いの常緑広葉樹林の林下に自生する。
・花期 :4~5月
・草丈:20~40cm(花茎)

・特徴 :球茎は丸く、エビネより小さい。葉は2~3個ついて、倒卵状狭長楕円形、長さ15~30cm、幅4~6cm、エビネより細く葉柄が長い。花は白色から淡紫色であまり開かず、下に垂れ気味に咲くものが多い。
・名前の由来:九州南部の宮崎・鹿児島両県にまたがる霧島(キリシマ)山地で初めて認識されたエビネ(海老根)であり、エビネは球茎の連なった様子がエビ(海老)の形に見立てたことによる。 

多数の白色の開花した花をつけた4個の花茎を伸ばした個体    (2010/4/8 宮崎県 )

生育地は両岸が自然林である渓流沿いの林床である。林中でも白い花はよく目立ち、光沢のある濃緑色の葉とよく調和して、清楚な雰囲気が漂っている。

自生地の環境   (2010/4/8 宮崎県 )

前画像と同じ個体を少し離れて撮影した画像であるが、木漏れ日が差し込み、シダ類も多く見られる少し湿度のある緩やかな風通しのある場所であった。


花茎と花  (2010/4/8 宮崎県 )

前画像の4個ある花茎の中で左側の3個の花茎と花を拡大した画像である。普通は1個の花茎に10~15個の花をつけるが、この個体は20個以上の花をつけている。 花は白色であまり開かずに下を向いて咲き、花柄子房の色は花と同じ白色で、典型的なキリシマエビネの花である。

淡紫色の花の個体の全体像 (2024/4/11 宮崎県 )

この個体も20個以上の淡紫色の花を密につけて、あまり開かず下を向いて咲いている。展開したばかりの黄緑色の若葉と淡紫色の花が調和している。

花茎の拡大画像 (2024/4/11 宮崎県 )

花柄子房の一部が緑色を帯び、唇弁の先端部は裂けていないように見える。背萼片、側萼片や側花弁の外側の濃淡のある淡紫色が美しい。

開花した小形の個体 (2024/4/11 宮崎県 )

植林されたスギ林と自然林の境界付近に自生している白色の花をつけた高さ30cmほどの小形の個体。

花茎と花  (2024/4/11 宮崎県 ) 

前画像の花茎と花の拡大画像である。淡い紅色を微かに帯びる白色の花で、蕾を含めて12個ある。花柄子房は花と同じ白色で、唇弁は3裂している。

花被片がやや平開している個体 (2024/4/11 宮崎県 )

キリシマエビネの花は個体によって花色や花の形態に変化が見られておもしろい。この個体は薄いピンクを帯びた花被片で平開気味である。

花茎と花   (2024/4/11 宮崎県 )

前画像の花茎と花の拡大画像である。白色の花被片(背萼片、側萼片、側花弁)は平開気味で、唇弁の外面が淡紫色を帯び、内面の襞も淡黄色を帯びている。花柄子房は淡いピンク色を帯びた白色である。

花の構造   (2024/4/11 宮崎県 )

白色の花被片(背萼片、側萼片、側花弁)の長さは約15㎜。唇弁はほぼ扇形で前方で浅く3裂し、内面に五条の隆起帯(襞)がある。距は上に立ち長さ約18㎜、斜上してやや曲がっている。 花柄子房はわずかに緑色の条線がある白色である。

わずかにピンク色を帯びた白色の花   (2024/4/11 宮崎県 )

わずかにピンク色を帯びた白色の花を樹木の根元で咲かせている個体。この個体の周辺は大木が多く、落ち葉が積もり下草のない場所であった。

キリシマエビネとミヤマムギラン  (2024/4/11 宮崎県 )

ミヤマムギランが樹木の根元に着生し、すぐ右隣に白色の花をつけたキリシマエビネが生育している。

4個の花茎 (2024/4/11 宮崎県 )

多数の個体が群生するエビネの集団を見かけることがあるが、キリシマエビネは単独で離れて個別に生育しているようで、このように4個の花茎を同時に見ることは少し稀である。

葉と多数の花をつけた個体   (2024/4/11 宮崎県 )

葉は2~3個ついて、葉表は光沢があり、倒卵状狭長楕円形、長さ15~30cm、幅4~6cm、先端は尖りエビネより細く、葉柄が長い。

花茎と花   (2024/4/11 宮崎県 )

前画像の花茎と花の拡大画像である。花茎の高さ約40cmほどであるが、花を30個ほどつけており、これはふつうの個体の花数の2倍にあたる。花は淡いピンク色を帯びた花被片であまり開かず 下向きに咲くふつうのキリシマエビネの花である。

淡いピンク色を帯びた花の個体   (2024/4/11 宮崎県 )

 淡いピンク色を帯びた花をつけた2個の個体。唇弁の内面も淡いピンク色を帯びており、雅な感じがする。
雑感:エビネといえば、今(2024年)から50年前の昭和50年(1970年)頃のエビネブームを思い出す。このブームは全国的なもので多くの人が山野に入り、自生しているエビネ類を取りつくし、 今では生物多様性の保全について説明するときに、人為的行為による種の減少の典型的な例として取り上げられている。それから、エビネ類は交雑しやすく、キリシマエビネもエビネやキエビネと自然交雑して おり、純粋な種の保存維持が心配される。観賞的な立場からでは、淡紫色を帯びた白色の花に林中で出会うとしばらく見入ってしまうほど惹きつけられる。