・分布 :本州(広島)、四国、九州
・生育地:山地の林下の湿った崖地や斜面に自生する。
・花期 :3~4月
・草丈:10~15cm
・特徴 :宿根性の多年草。ウスバサイシンによく似るが、全体がやや小形である。葉は長さ4~6cm、卵円形で基部はハート形、先端はとがる。2個の葉柄の間から2~3cmの直立した花梗を出し暗紫色の花を横向きに開く。
萼筒は径約10㎜、長さ7~8㎜、壺形で内面には縦に隆起した襞が18個ほどあり、ノドは少し括れる。萼筒の縁は三角状の卵形の3個の萼裂片となり水平に広がり、先端はとがる。雄しべは6個、雌しべの花柱は3個で、これは
それぞれウスバサイシンの半数で、識別のポイントとなる。
・名前の由来:筒状花の先端部の幅広く広がっている部分を植物用語で舷部とよび、また舷は船体の側面を指す。クロフネ(黒船)は本種の花の舷部(フネ=船)が黒(クロ)色であり、サイシン(細辛)は本種の細い根を口に含むと
痺れるような辛さの味覚があることからきている。
生育地は標高約800mほどの両岸が自然林である渓流沿いの崖地である。緑の苔の中から若葉を展開し筒状の花をつけた姿は新鮮である。
前画像と同じ生育地であるが、急傾斜の崖地で洪水時は水没して流されそうな場所であった。
生育地は標高約1000mほどの落葉広葉樹の自然林の崖地で、高所であるためか、開花時期が少し遅い。
萼筒は径約10㎜、長さ7~8㎜の壺形で、ノドは少しくびれている。萼筒内面には縦方向に隆起した襞が18個ほどあるが、対応して萼筒の外面にも縦方向の条線が見られる。
名前の由来となった萼筒の舷部の黒褐色と萼筒外面の縦方向の条線がよくわかる。
開花すると萼片は平開するが、この花は3個の萼片がわずかに開いたばかりで、葉もまだ展開しきっていない。また、葉脈の上だけでなく、
葉の表面にも短毛が見られる。この葉の表面の短毛は葉が成熟すると消失する。
3個の萼片がほぼ平開し、萼筒内部の様子がわかる。
筒状花の内部の拡大図であるが、3個の花柱と6個の雄しべが見られる。外見がそっくりなウスバサイシンは花柱6個と雄しべ12個とそれぞれ2倍であり、クロフネサイシンとの識別のポイントとなっている。
3個の萼片、萼筒舷部の黒紫色、6個の雄しべと3個の花柱の配置はシンメトリックでおもしろい。
葉は長さ4~6cm、卵円形で基部はハート形、先端はとがる。他の葉の陰に隠れている葉が1個あり、全部で6個の葉の株である。
前の画像の2年後の状態で、この年は寒かったためか、まだ蕾で葉も展開しきっていない。2年前に比べて2個葉が増え8個になり、蕾も4個ありこの場所が気に入っているようである。また、3個の萼片が
閉じて3角錐の形状をして、その頂点に小穴が開いている様子はユーモラスである。
葉は葉表を縦に折りたたんで合掌した状態で葉裏しか見えず、2個の葉柄の間に1個の蕾が見える。
雑感:カンアオイ属ウスバサイシン節の植物は7種あるが、広島県ではいずれもよく外見が似ているウスバサイシン、イズモサイシン、クロフネサイシンが生育している。冬期に葉を落として根茎で越年する夏緑性植物であるが、スプリング・エフェメラルとよばれるカタクリやコバイモ類などと共に早春の生命の息吹を感じる植物である。渓谷沿いの崖地の急な斜面に自生する株を見ると、エライオソームつきの種子をアリがこんなところまで運び不要な種だけ捨て、それが発芽した結果が今の姿であると思うと凄い手がかかっているようで感心する。