マンセンカラマツ(満鮮落葉松)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)マンセンカラマツ

・分布 :本州・四国・九州、朝鮮半島、中国東北部、サハリン、シベリア
・生育地:里山、海岸や低山地の明るい林縁や草地。
・花期 :5~7月
・草丈(花茎):30~120cm 

・名前の由来:マンセン(満鮮)は中国東北部(旧満州)と朝鮮半島をつなげた地域をさし、この地域に多数生育していることによる。カラマツ(落葉松)は多数の雄しべの半球状に集まった花の様子が カラマツの短枝に似ていることに由来し、マンセンカラマツ(満鮮落葉松)と命名された。

・特徴 :同属のカラマツソウによく似ている。多年草で全体、無毛である。茎は直立し上部で分枝する。根生葉は花期にはない。茎葉は3~4回3出複葉、小葉は卵形~広卵形、長さ1~7cm、幅1~4.5cm 、3浅裂し、托葉と小托葉は膜質で黄緑色、全縁。半球状の花は径1cm。花序は散形~複散形、径2~15cm、花柄は1~2cm。萼片は楕円形、長さ3~4㎜、白色~紫色を帯び、早落性。雄しべは多数あり、長さ6~8㎜、 葯は黄白色、長さ1.2㎜。花糸は根棒状で、葯とほぼ同幅。花柱は楕円状。1花当たりの痩果は3~8個、倒卵形で切頭あるいは凹頭となり、これは、カラマツソウの痩果数7~15個、倒卵形で円頭~やや鋭頭とは異なる。

 全体像   (2018/5/26 広島県 三次市) 

花をつけた草姿は同属のカラマツソウにそっくりであるが、マンセンカラマツのほうが全体に大きい。茎は直立して上部で分枝する。

生育環境    (2018/5/26 広島県 三次市)

流紋岩質の里山の標高約150m付近の明るい林縁の草地に生育している。この草地は林縁から河畔に広がっており、富栄養な土壌を好むようである。

1個体の全体像    (2018/5/26 広島県 三次市)

ふつう数個体の集団で生えているが、この個体は単独で生育している。背景にツル植物のクズがあるが、他の場所ではクズに巻かれた個体も見られた。

群生     

前方に小さな群生、後方に大きな群生がみられ、純白色が目立つお花畑みたいである。


生存戦略      

マンセンカラマツは草丈が100cmを越す多年草の高茎草本であるが、晩春・初夏ともいえる5月下旬にはすでに満開の個体もあることから、草地の他の高茎草本より早く成長し、花を咲かせ結実する生存戦略のようにみえる。

 生存競争    

富栄養土壌の明るい日当たりの良い草原には高茎草本も多く、ススキ、ヤブマオ、スイバ、イネ科植物やシダ植物のワラビなどと競合している。このような草地は人の手か洪水による攪乱がなければ 自然遷移で木本類が進出し環境が大きく変化する。

 花と蕾    (2018/5/26 広島県 三次市)    

多数の開花したばかりの花と多数の蕾の組み合わせは活力がある。

虫媒花      

マンセンカラマツは茎頂に散形~複散形花序で多数の花を高密度でつけ、開花時は茎頂が白色のかたまりなる。このように進化したのは虫媒花でありながら、訪花昆虫を誘う花弁や萼片を欠いているため 雄しべを大きく、数も多くすることで、花をより豪華に見せて、誘花昆虫を誘うためのようである。

花       

半球状の花は径1cm。雄しべは多数あり、長さ6~8㎜、葯は黄白色、長さ1.2㎜。花糸は根棒状で、葯とほぼ同幅。花弁はない。 

名称 

雄しべの花糸と葯は花全体を構成するが、雌しべの花柱はとても小さく目立たない。萼片は楕円形、長さ3~4㎜、白色~紫色を帯び、早落性で、開花した花には萼片はない。 

林縁の個体      

林縁の樹木の下に生育している個体。明るい光を求めて、茎は直立せずに水平方向に茎を伸ばし、茎頂に花をつけている。

茎頂の花序  (2018/5/26 広島県 三次市)     

前方の花序の花は開花しているが、この開花している花の高さに合わせるように後方の蕾の花序が曲がっている。この個体の萼片はすべて白色である。

葉と苞      

茎葉は3~4回3出複葉、小葉は卵形~広卵形、3浅裂し、托葉と小托葉は膜質で黄緑色、全縁。

花序の方向  (2018/5/26 広島県 三次市)   

明るい開けた草地の個体は垂直に茎を伸ばし、茎頂に散形花序~複散形花序で茎に対して水平に半球状に花を展開するが、林縁の斜面に生育する個体は茎を光が入ってくる水平方向に伸ばすため 茎頂の花序は垂直に近い角度で花を展開している。
雑感:広島県にはカラマツソウ属の植物は7種ほどあるが、最もよく目にするのがアキカラマツである。広島県内のマンセンカラマツを花期が5月と早いことや 生育地が里山の明るい林縁や草地という条件で探したが、目にするのはアキカラマツばかりで結局、以前から確認記録のある場所以外では見れなかった記憶がある。 この種も大陸系遺存植物であり貴重であるが、草地は人手が入らなければ自然遷移が進むので将来が危惧される。