ミズトンボ(水蜻蛉)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)ミズトンボ 

・分布 :北海道、本州、四国、九州(沖縄除く)、台湾、朝鮮半島 
・生育地:日当たりのよい湿地。
・花期 :6~9月
・草丈 :40~80cm

・特徴 :多年草で、地下に球根をもつ。茎は単立し、断面は三角状で高く伸び最大80cmほどになる。葉は茎の下部に数枚つき、線形で長さ5~20cm、葉幅は狭く3~6㎜茎を抱く。 茎の上部から先端部にかけて緑白色の花を総状に多数つける。花径は約15㎜で、側萼片は後ろにねじれて背部に達し、唇弁は緑色で十字型の特異な形をしている。距は下垂して長さ15㎜、先端が丸く膨らむ。

・名前の由来:湿地(水) に咲き、花の形状がトンボ(蜻蛉)に似ていることから。

咲き始めの個体  (2014/8/24 広島県三原市)

茎は単立して周囲の草より高く伸び、花は下から咲き始める。線形の葉は茎の下部に数枚付く。

 

花の全体像 (2023/8/28 広島県三原市)

緑色の唇弁の十字架が特異である。2個ある茶色の葯が眼で、柱頭が口とすればパレイドリア現象で人の顔のようにも見えなくはない。 ラン科類は特定の花粉媒介昆虫を対象にして花を進化させたらしいが、この花の昆虫はどんなだろうか。この画像ではクモがその昆虫を狙っている。

花の拡大画像 (2023/8/28 広島県三原市)

 唇弁の十字架が人が両手を広げて、万歳をしているようにも見えてユーモラスである。

花の構造(1) (2023/8/28 広島県三原市)

 淡緑色の側萼片が白い背萼片や側花弁に比べて大きく、さらに花の後ろ側曲がり込んでいる。

花の構造(2) (2023/8/28 広島県三原市)

 葯内の花粉は糸状付属体を介して粘着体と繋がっており、花粉媒介昆虫に付着する。柱頭は2個ある。

受粉して子房がふくらみ始めた花 (2023/9/21 広島県東広島市)

 正面に咲き終わり受粉して子房がふくらみ始めた花が3個見られるが、茎が黒褐色に変色しているため、種子散布までたどり着けない可能性がある。

 果実 (2023/9/21 広島県東広島市)

 受粉が成功し、花柄子房がふくらみ長さ約1cmの緑色の若い果実に変貌した。さらに熟して蒴果として、多数の種を散布する。

多数の花を付けた個体 (2023/8/23 広島県三原市)

 この湿地の中で見られた最も大きく高さ約80cmの個体で、花と蕾の数は多く20個を超えている。

全体像 (2023/8/28 広島県三原市)

 湿地の中で他の植物に混じって開花している個体の全体像であるが、茎も花も緑色のため周囲の紛れて分かりにくい。
雑感:ミズトンボといえば、誰もが感じる唇弁の十字架に似た形状の特異さであろう。あの十字架に訪花昆虫が足を掛けて、距の蜜を吸うときに、 体についた他の花からの花粉を柱頭につけ受粉させ、吸い終わり去るときに粘性体と連動して葯から花粉を体につけて飛び立つようにと計算された進化の結果が、 この十字架とすれば、何やら別な方法がもっと効率的であるのではと思ってしまう。しかし、特定の訪花昆虫に対して受粉してもらおうと懸命に己が身を変化させる姿こそが ラン科植物の魅力の核心であり、考えるだけでも楽しい。