ムラサキセンブリ(紫千振)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)ムラサキセンブリ

・分布 :北海道西南部~九州、朝鮮半島・中国(北部・東北部)・ウスリー 
・生育地:低地から山地の開けた明るい草地、カルスト台地や蛇紋岩地にもよく見られる。
・花期 :9~11月
・草丈(花茎):15~40cm 

・名前の由来:花冠が白色のセンブリ(千振)に対して、花冠が紫色であることからムラサキセンブリ(紫千振)となった。

・特徴 : 一年草、または越年草。茎は直立し節間は短く、茎の中ほどから盛んに分枝するが、枝は短い。茎葉は対生し、無柄、線状楕円形で長さ2~5cm 先はとがり主脈がへこんでいる。花は柄があり枝先や葉腋に1個ずつつく。萼裂片は5個あり、線形で花冠裂片より短い。花冠は5個の花冠裂片に分かれ、紫色で濃紫色の縦脈が入る。 裂片は楕円形で先がとがり長さ7~13㎜、基部に長い毛状突起に囲まれた蜜腺溝が2個ある。果実は蒴果。

生育環境     (2020/10/13 広島県 安芸太田町)

標高約1000mほどの春先に野焼きが行われている草原の山で、地質は流紋岩類のからなり岩塊が点在し、深層風化作用でできた粘土質の赤色土で地表はおおわれている。 ムラサキセンブリはササ類などと山体の中ほどから上部の草地の所々に生育している。

全体像   (2020/10/13 広島県 安芸太田町)

草丈30cmほどの個体の全体像。この草原に生える個体の標準的な個体で、茎と葉は暗紫色で、花も紫色が濃い。古来、尊ばれる紫色で統一され高貴さがある。


花の近接画像 (2020/10/13 広島県 安芸太田町)   

合弁花で花冠裂片は5個であるが、日が差さないと平開しない。花冠裂片は淡紫色に濃紫色の縦脈が入り、長さ8~12㎜、幅2.5~3㎜、楕円形で先がとがっている。

花の名称     

5個の萼片は線形で葉と同じ暗紫色。花柱は紫色で柱頭は2つに分かれている。雄しべの花糸は白色透明であるが葯は青紫色を帯びている。花冠裂片の基部から伸びるよく目立つ毛状突起も 青紫色を帯びているが、毛状突起の基部にある蜜腺溝はこの画像では確認しずらい。主に訪花昆虫の注目を引くための紫色であろうが徹底ぶりがすごい。

紫色の濃くない個体   (2013/10/28 長崎県 平戸島) 

葉は緑褐色、茎が赤褐色の個体で全体が明るい印象をうける。生育場所は低山地の標高250mほどの草地でここも春先に野焼きが行われており、 地質は安山岩類の風化でできた表土で所々に岩肌が露出し礫も点在している。

倒れて斜めになった個体 (2013/10/28 長崎県 平戸島) 

前画像と同じ場所であるが、ススキの繁茂する草地で草丈50cmほどの大きな個体あるが、強風などの影響でススキ倒れて斜めに傾いて咲いている。前画像と同じく葉は緑褐色、茎が赤褐色の個体で紫色が濃くない個体である。

茎・葉・花の近接画像頭花  (2013/10/28 長崎県 平戸島)  

茎は赤褐色、葉は緑色~赤褐色、花冠裂片は淡赤紫色に赤紫色の縦脈が入っている。全体に赤紫色で落ち着いた華やかな印象をうける。 

葉が緑褐色の個体  (2020/10/13 広島県 安芸太田町)  

最初の画像と同じ場所に咲く個体であるが、茎は紫褐色、葉は緑褐色で紫色が薄まっている。 

アキノキリンソウとムラサキセンブリ  (2020/10/13 広島県 安芸太田町) 

全体が暗紫色のムラサキセンブリと黄色い花を咲かせたのアキノキリンソウが少し見える。この周辺ではウメバチソウ、リンドウ、ハバヤマボクチやヤマラッキョウなどもみられる。

緑色の葉の個体  (2024/11/5 長崎県 平戸島)   

草丈25cmほどの個体であるが、葉が緑色で茎も褐色に近い。

花の近接画像  (2024/11/5 長崎県 平戸島)  

前画像の花の近接画像。花の形状は変わらないが、花冠裂片が淡青色に青紫色の縦脈が入っているように見え、全体に青色がかった印象を受ける。

赤紫色の個体   (2023/10/16 広島県 安芸太田町)  

成長期に何らかの理由で茎が途中で折れ、草丈10cmほどで開花している個体。

花の近接画像   (2023/10/16 広島県 安芸太田町) 

前画像の花の近接画像。赤紫色の蕾と花冠裂片の調和が素晴らしい。茎、葉や萼片も赤紫色に近い。

イヌセンブリの花  (2016/11/10 広島県 東広島市)  

ふつうのイヌセンブリの花で、花柱がクリーム色、花冠裂片が白色に単純な青紫色の縦脈、毛状突起が少し長くよく目立つ、茎と葉が緑色などの特徴があるが、すべてがムラサキセンブリとの 相違点ではなく、傾向としてとらえたほうが良いようである。必ず、湿地にイヌセンブリは生えるとあるが、田んぼの畔や山間の池の堤にある個体など同定が難しい時が多々ある。その他 苦みについても個体差があるようで、確実でないように思える。

山間の池の堤に生えるイヌセンブリ (2016/11/10 広島県 東広島市)   

花柱がクリーム色、花や蕾の付き方や池の堤であることからイヌセンブリと判断したが、茎は紫色で葉も紫褐色で一見、ムラサキセンブリのように見える。

淡紫色の花の個体   (2020/10/13 広島県 安芸太田町)  

たくさんのムラサキセンブリがあると花の色も濃淡があり、この個体は花も蕾も白色が強い淡紫色である。生育地でいろんな花を楽しめるのは何よりである。
雑感:中国山地の1000mほどの山の草原で初めてムラサキセンブリを見たときは黒紫色ともいえる色の濃さに驚いた記憶がある。それ以降、ムラサキセンブリの識別では この色だけで十分であろうと思っていたが、その後紫色のイヌセンブリとの同定に迷うことがよくあり、交雑種も含めて分けることが難しいのではと考えることがある。秋も深まったころに、明るい日差しの下で 草体に散りばめたように咲くたくさんの紫色の5個の先のとがった花冠裂片が、地上の星のように見えて神秘的である。