ナンブイヌナズナ(南部犬薺)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020) ナンブイヌナズナ 

・分布 :北海道(夕張岳、日高山脈北部)、本州(早池峰山) 
・生育地:高山の超塩基性岩地(蛇紋岩地や橄欖岩地)からなる風衝地に生育する。
・花期 :6月~8月
・草丈:5~10cm(花茎)

・名前の由来 :ナンブ(南部)は最初に発見された場所が岩手県の南部地方であったことに因む。イヌナズナ(犬薺)はナズナ属のナズナが春の7草に選ばれ食べられるのに対して 食べられないことからイヌナズナ(犬薺)となり、ナンブイヌナズナはこのイヌナズナ属であることによりナンブイヌナズナ(南部犬薺)となった。
・特徴:地下茎は細長くよく分枝して大株になる。茎は星状毛が密生し、花のある有花茎と葉だけの無花茎がある。葉は柄がなく表面と縁に星状毛と単純毛が密生する。無花茎は高さ5~25㎜、 葉は密生し倒披針形で全縁、長さ5~15㎜。有花茎は高さ2~10cm、葉はまばらに互生し倒卵形、長さ4~10㎜、縁に鋸歯がある。花は黄色、直径約8㎜、穂状花序~総状花序に10個ほどつく。 花弁は4個あり、広倒卵形で先端はへこむ。果実は倒卵状楕円形の短角果で、長さ0.2~0.5㎜の残存花柱がある。

多数の花をつけた個体    (2025/6/26 北海道 夕張岳 )

地下茎は細くよく分枝して有花茎と無花茎をつける。この個体は多数の有花茎を出して黄色い花を株元が見えないほど華やかに咲かしている。

生育環境   (2025/6/26 北海道 夕張岳 )

北海道の夕張岳の1400m以上にある蛇紋岩メランジュ帯の砂礫地に生育している。強風が吹き抜ける風衝地で、植物の育ちにくい超塩基性岩の土壌であることから 矮性になったようである。下方に見える葉はユウバリソウである。


礫地に根茎を下ろした個体  (2025/6/26 北海道 夕張岳 )

礫の下には土壌があり、そこに根茎を下ろしている。礫のなかから花を咲かしている姿は野生味にあふれている。

小礫中に点在する小さな個体     

1cmほどの大きさの礫地に小さな個体が点在し花を咲かしている。これらの個体は地下茎でつながった株なのか、独立した単独の小株なのかわからない。 下方にはチングルマの葉と蕾が、右上にはユキバヒゴタイの葉がみえる。

小さな個体  

風衝地であるため、礫地にへばり付いて生育している。有花茎は3個で、残りは無花茎である。

花  

開花したばかりの花の近接画像。花弁は4個、雄しべは6個で、葯は開花したばかりでまだ黄色い。

岩間の個体        

礫の隙間から有花茎を伸ばし花を咲かせている。開花したばかりの花で新鮮でういういしい。

砂礫地の個体      

崩壊地の急斜面の砂礫地に生育する個体。咲き始めで総状花序に蕾も見える。下方の葉はエゾミヤマクワガタである。

開花株の周辺      

礫地の中央に1個のナンブイヌナズナが黄色い花を咲かしている。左上と右下に黄色の花をつけたシソバキスミレが1個づつみえる。

花の名称      

萼片は黄色で4個あり離生し、花弁は4個あり先端はへこむ。雄しべは6個で内側の4個が長く、子房は上位、2心皮性で合生心皮である。 果実は短角果である。

結実した個体      

花が咲き終わり結実した個体。左方に1個の花が咲き残っているが、他の有花茎は結実して短角果を総状につけている。中央に黒色の茎が見られるが、木質化していて、 年を経た古い株のようにみえる。

残存花柱      

前画像の右上方の総状についた果実の近接画像。ナンブイヌナズナはイヌナズナ属の植物であるが扁平なうちわ型(倒卵状楕円形)の短角果とその先に残る花柱の長さも種の区別に使われる。残存花柱は 長さ0.2~0.5㎜である。

エゾタカネツメクサとナンブイヌナズナ   (2025/6/26 北海道 夕張岳 )

 礫地に開花したナンブイヌナズナとその右方に葉だけのエゾタカネツメクサが生育している。近くの他の風衝地では白色の花を多数つけたエゾタカネツメクサも見られた。
雑感:植物図鑑やネット上の画像から勝手に想像していたナンブイヌナズナは礫地の岩棚に黄色い花を多数咲かせ、その存在を誇示している姿であったが、濃いガスに包まれた夕張岳ので初めて出会ったナンブイヌナズナは風衝地の砂礫地に同じような環境で黄色い花を咲かせるシソバキスミレと見間違うほどの小さく可憐な植物であった。超塩基性岩の地質に生育する植物は矮性に進化した植物が多いが本種も葉や茎が小さくアブラナ科の植物とは 思えないほどである。