オグラセンノウ(小倉仙翁)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)オグラセンノウ 

・分布 :本州(岡山、広島)九州(熊本、大分)、朝鮮半島北部 
・生育地:比較的冷涼な丘陵地や山地のやや日当たりの良い湿地や林縁。
・花期 :6~8月
・草丈 :50~100cm

・特徴 :盛夏に直径約2cmの紅色で先が深く裂けた花を集散花序でつける大陸系依存植物(満鮮要素)の多年草。細い茎は最初は直立するが次第に周囲の植物にもたれかかる。葉は対生して柄はなく線状披針形で長さ4~10cm。果実は蒴果である。APG分類でセンノウ属からマンテマ属に移行した。強烈な紅色は良く引き立ち、古来から園芸的に注目されるのも理解できる。  
・名前の由来:オグラ(小倉)は京都市右京区の小倉山のことで、センノウ(仙翁)は仙翁寺(廃寺)に栽培されていた仙翁花(センノウゲ)が江戸後期出版の草木図説に掲載されており、牧野富太郎が1903年に阿蘇山で採取された標本にこれと同一の植物としてオグラセンノウと命名した。

3個の花  (2015/7/17 大分県日田市)

茎頂に3個の紅色の花を付けた個体。本種の花は雄性先熟で雄性期と雌性期があり、この花は咲き始めの雄性先熟で雄性期にあるが、雄しべの紫色の葯がまだ花粉を付けたままで観賞するには最適期である。

 

生育地の環境 (2015/7/17 大分県日田市)

落葉広葉樹林の二次林の林縁に20個体ほどが生育しており、傍らには湿気を供給する小さな灌漑用の自然の土水路が通じている。この生育場所は山奥の一軒の農家の生活圏内にあり、本種のための保護活動は行われていないが、 耕作破棄により林内・林縁の下刈りがなくなれば、ササやススキなどの植物に負けて絶滅すると思われる。

咲きはじめ花 (2015/07/17 大分県日田市)

 3個の花の中で、左下の花は雄しべを10本出しているが、他の2個の花は咲き始めで雄しべをまだ開出中である。5枚ある花弁の紅色と先の深い細裂が印象的である。 この5枚の花弁の細裂は訪花昆虫えの目印か、花の面積を減らす目的なのかよくわからない。

全体像(2015/07/17 大分県日田市)

 クヌギの樹幹の根元近くに生育している個体。細い茎に対生している線状披針形の柄のない葉は5~9cmで、茎の先の3個の花の様子が背景のクヌギの樹幹で引き立ってよくわかる。

花の構造 (2015/07/17 大分県日田市)

雄しべ(雄ずい)10個、雌しべの花柱は5個が普通であるが、3個の花の中で右上方と中央下方の花は雄性期で、左上方の花は雌性期の花で花柱が開出し雄しべは倒れている。 各花弁の舷部基部には2枚の付属体(鱗片、副花冠)とよばれる小さな花弁のようなものが確認できるが花弁と同じ色であるため目立たない。 この付属体があることにより、花は複雑で観賞価値が増すように思えるが、蝶などの訪花昆虫を引き寄せる効果もあるのであろうか。

茎 (2015/07/17 大分県日田市)

茎や葉には産毛のような細かい毛が見られる。

生育環境 (2015/07/17 大分県日田市)

薄紫色の花のナヨクサフジ(帰化植物)とススキなどと生存競争をしているように見える。

集散花序の花 (2015/07/17 大分県日田市)

多数の紅色の花を集散花序でつけた草姿は艶やかである。

茎と萼 (2015/07/17 大分県日田市)

萼片は合生して円筒形で10脈がある長さ約2cmの有毛な萼筒となる。

蕾・花・果実 (2015/07/17 大分県日田市)

 集散花序で蕾,雄性期の花,雌性期の花,結実した花,果実と混在している。
雑感:初めて本種を見た岡山県では自然度が保たれた保護区内の湿原であり、大分県でも湿地周辺を予想していたが、意外にも林縁に無造作に溌溂として紅色の花を咲かせ自生していたのには驚かされた。 運よく観賞するにちょうどよい咲き始めの個体が多い時期に当たり、新鮮な紅色の花を満喫できた。ここも、林縁の下刈りなどの人手が入らなくなると生育が途絶えると思われるので将来が不安である。