オニバス(鬼蓮)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)オニバス

・分布 :本州(宮城県以南)、四国、九州 
・生育地:低地のやや富栄型の溜池や湖沼
・花期(開放花):8~10月
・草丈(葉の直径):30~150cm 

・名前の由来:オニ(鬼)は葉の両面や葉柄などにトゲが生えていることから、ハス(蓮)は葉が蓮の葉に似ていることに因む。 ハス(蓮)についてはハスの花托がハチの巣に似ており、古来「はちす」とよばれ、転訛してハス(蓮)となったといわれる。

・特徴 : 一年生の浮葉植物。根茎は短く、多数の根を束生する。成長初期の浮葉は基部に切れ込みのある長楕円形(馬蹄形)。成長した浮葉は盾状の円形で直径0.3~1.5mほどで表面には著しい しわがある。葉の裏表、葉柄、花茎など全体にトゲがある。裏面は赤紫色で葉脈が桟状に隆起する。花は水中で自家受粉する閉鎖花と水上に出て開花する開放花をつける。 萼片は4個、花弁は紫色で多数。

全体像    (2012/9/22 大分県 宇佐市)

オニバスの花の印象は葉を突き破って咲く花の風景である。水上に出て赤紫色の花弁をつける開放花より水中で自家受粉する閉鎖花のほうが多い。

花茎先端部の花の近接画像  (2012/9/22 大分県 宇佐市)

十分に溜池に水があるときの画像で、この花茎も葉を突き破って咲いており、花は4個の萼片、多数の花弁は外側が赤紫色で内側にいくほど、白色が強くなる。


葉を突き破って咲く開放花  (2012/9/22 大分県 宇佐市)  

葉を突き破ってトゲだらけの花茎の先に開放花をつけた様子は印象的である。 

干上がったばかりの溜池の個体   (2023/10/5 大分県 宇佐市)  

茎元に2個の開放花をつけた個体。農閑期になり溜池保全のため溜池の水を抜いたため、干上がりオニバスの茎元が地上に出ている。溜池の水抜きの 歴史は古く長年にわたりこの年間周期で、この池のオニバスは生育しているようである。

2個の開放花の近接画像   

オニバスの開放花は午前中に咲き、午後には閉じるといわれている。オニバスの花の赤紫色の花弁はふつう平開せず、内部の黄色い雄しべが見える程度の花弁の開きが開花状態である。 右の花はまだ蕾のようであるが、少し開いた萼片内側の赤褐色と花弁の赤紫色の取り合わせがなんともいえない。


花の構造   (2023/10/5 大分県 宇佐市)

被子植物の分類系統では道管がないアンボレラ目ついでスイレン目は原始的な植物とみなされ、オニバスはスイレン目スイレン科オニバス属に分類される1属1種の植物である。 花は両性、花被片は4枚の萼片と多数の花弁に分かれている。雄しべは多数で離生し、心皮は多数あり合着して1個の雌しべを構成している。子房は心皮の数だけ分かれている。 子房は下位で偽柱頭がないのがオニバス属の特徴である。


萼片と子房のトゲ    

数時間経過後の前画像の斜め横から見た近接画像。時間経過したため両方の花の花弁が少し開いている。萼片や子房にも鋭いトゲがある。

根茎が露出した個体  (2023/10/5 大分県 宇佐市) 

溜池の水が抜かれたため、池の水底の泥土から根茎が露出して、葉柄や花茎を展開している全体像がわかる。池に十分に水があるときに長く伸びた葉柄は成長した大きな葉をつけているが、 水位が減ってからの葉柄は短く、葉も縮れて小さいのがわかる。花茎についても同様で長く伸びた花茎の先には果実となった閉鎖花が見られるが、水位が減ってからは 多数の花茎を伸ばしているがいずれも短く、花も未熟である。少し見にくいが右上の大きな葉の陰に閉鎖花の果実が裂けて中のでんぷん質に包まれた多数の黄褐色の種子が見える。

結実した閉鎖花  

これも池底の泥土が現れ、根茎が露出した個体であるが、トゲを密にまとい結実して大きく膨らんだ子房が数個見える。根茎の直ぐ上に短い花茎が赤紫色の開放花らしき花をつけているが、花弁が開くかわからない。 泥土は水分を十分に蓄えているようであるが、多数ある閉鎖花をふくめた成長過程の若い花は結実するか心配である。

水面を埋め尽くしたオニバスの葉  (2009/9/20 大分県 宇佐市) 

この溜池の縦横150mX200mほどの長方形の大きな溜池で、ふつうは1~1.5mほどの水位である。年によりオニバスの盛衰はあり、この年は溜池の水面全体を葉でおおいつくすほどであり、 この風景は生命力の強さと野生の醍醐味を感じる。しかし、トゲだらけのオニバスが水面を覆うほど繁茂すると溜池を管理、利用する農家の人に嫌われるのもうなづける。

水面の葉  (2009/9/20 大分県 宇佐市)  

水面に浮かぶオニバスの葉であるが、茶色に変色し朽ちた葉、黄褐色に変色し朽ちかけた葉、成長した緑色の大きな葉、成長途中の緑色のちぢれた小さな葉、 ほかの葉に乗り上げて競合している葉など多彩である。  

葉柄と花茎のトゲ   

オニバスの葉柄と花茎のトゲの様子がわかる。このトゲの役割は水中では水生昆虫や魚類などの食害を防ぐものであろうか、それにしても過剰に思える。 密にトゲがある子房がふくらんだ果実は破裂して中のでんぷん質に包まれた種子が水面を漂い拡散し、種子は休眠状態(発芽可能)で数十年間、生存可能であるといわれる。

葉の表側   

盾状の円形で直径0.3~1.5mほどで表面には著しいしわがあり、トゲも疎に点在する。 

葉表のトゲ   

円形の大きな葉には葉脈が大きな網の目のように走っているが、トゲは葉脈の交点に発生している。 

葉の裏側  (2023/10/5 大分県 宇佐市)  

葉の裏は赤紫色で葉脈が桟状に隆起する。

葉裏のトゲ  (2023/10/5 大分県 宇佐市)  

葉裏にも桟状に隆起する葉脈の交点にトゲが点在している。

オニバスとヒシ  (2023/10/5 大分県 宇佐市)  

この溜池ではオニバスとヒシが繁茂して、その他、ノタヌキモ、イヌタヌキモやキクモも見られる。
雑感:オニバスは存在感のある不思議な植物である。郷里の水田灌漑用の溜池の水面を大きな葉で覆いつくす様は見事というか異様であった。この植物がハスのように 根茎を残さず、種子だけで翌年発芽に頼る一年草というのも効率が良いとも思えず不思議である。開放花は花弁が紫色で中央の雄しべの黄色がアクセントになり宝石のようで好ましいが、 閉鎖花より結実が悪いというのも解せない。