オオヒキヨモギ(大引き蓬)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)オオヒキヨモギ

・分布 :本州(関東地方以西)、四国、中国中南部 
・生育地:低山地の乾いた林縁や道路脇の崖地などに生育する。
・花期 :8~9月
・草丈(花茎):30~80cm 

・名前の由来:同属のよく似た植物であるヒキヨモギより大きいことからオオヒキヨモギ(大引き蓬)となった。ヒキヨモギについてはヨモギ(蓬)は葉がヨモギの葉に似ていることにちなむが、ヒキ(引き)についてはちぎると糸を引くように細い管がでてくることからなどの説があるが定まっていない。

・特徴 : 一年草の半寄生植物。茎は斜上しよく分枝し、葉とともに開出した腺毛が密生する。葉は卵形で長さ1.5~4cm、幅1.2~3cm、茎の下部の葉は切れ込みが深く大きな裂片に裂け、上部の葉は切れ込みが小さい。 花は上部の葉腋に1個ずつつく。萼は細い筒形で開出した腺毛が密生し、長さ2~2.2cm、先端は5裂し裂片は狭披針形で長さ5~7㎜。花冠は長い筒状で先は唇形、黄白色、長さ2.5~3cm、上唇は左右に扁平、下唇は3裂し、 上唇の先端部は褐色を帯びる。

生育環境     (2021/8/16 広島県 三原市)

標高約300mの瀬戸内海に面した古生層(付加体)の低山の標高200mほどの道沿いの崖地に根を下ろした草丈約80cmの株。茎は斜上して出しているが、上部はよく分枝し下垂して花をつけている。 崖地の岩は泥岩、砂岩やチャートなどからできている。

2個の個体の全体像   (2021/8/16 広島県 三原市)

崖地に生育する葉のきれいな2個の個体。2個の個体とも茎元は葉の陰になって見えない。


大きな個体 (2021/8/16 広島県 三原市)   

右下のススキの中に根茎があり、花をつけた枝先まで100cmを越す大きな個体である。半寄生植物であることからススキが 寄生主と推測される。

群生(正面)   (2021/8/16 広島県 三原市)  

崖地の岩上に小さな固いから大きな個体まで合わせて10個体ほどが群生している。

群生(左側面)  (2021/8/16 広島県 三原市) 

前画像を左側面より見た画像。寄生主と考えられるススキのほか、ヌルデ、アカメガシワ、ノイバラなどが見られ、乾燥地に強い植物が多い。

4個の茎 (2021/8/16 広島県 三原市) 

崖地の土壌の少ない岩の隙間に根を下ろした個体で茎元は同じ岩の隙間にあり、草丈50cmを越す茎を4個出しているが、一株の個体かどうか不明である。

茎元 (2021/8/16 広島県 三原市) 

前画像の茎元の画像で、4個の茎は中央の茎元から、左手前、垂直、右斜め、右横方向に伸びている。茎元には寄生主とみられる貧弱なススキの葉が見られるが、 大きなオオヒキヨモギの成長を賄える栄養分を供給できるのか、不思議である。あまりオオヒキヨモギはススキに依存せずに光合成をして自活しているのであろうか。

茎の上部  (2013/9/5 広島県 三原市)  

花は上部の葉腋に1個ずつつく。

枝先  (2013/9/5 広島県 三原市)  

花は枝の下部の蕾から順に上部に向かって開花している。先端から蕾、開花している花、結実した花の順に並んでいる。 

花と萼  (2021/8/16 広島県 三原市)  

萼は細い筒状で腺毛が密に生え、長さ約2cm、先端は5裂し、萼裂片は披針形で長さ5~7㎜。花冠は長い筒状で淡黄色、先は唇形で上唇と下唇に分かれる。上唇は左右に扁平で2裂しせず、 淡褐色を帯びる。下唇は3裂するが左右不相称である。

花の名称   

雄しべは4本、花冠上唇内にあり見えない。雌しべは長く上唇の内を走り、柱頭がわずかに外に出て見えている。筒状の長い萼には濃緑色の筋状の縦線が入っている。

オオヒキヨモギとヌルデ  (2021/8/16 広島県 三原市)   

崖地の2個の大きなオオヒキヨモギ、右側の個体は上部の茎が欠損している。周囲はヌルデだけで寄生主と思われるススキは見られない。

葉  (2021/8/16 広島県 三原市)  

葉は茎の下部では対生、上部ではややずれて互生する。葉柄は翼があり長さ0.5~2.5cm、葉身は卵形、長さ1.5~4cm、幅1.2~3cm、羽状に浅裂~深裂する。

半日蔭の個体   (2013/9/5 広島県 三原市)  

同じ崖地であるが、北西向きの斜面で、日当たりが悪く湿り気味の環境であるためか、生育している個体の大きさが全体に小さい。
雑感:APGⅣ分類体系ではゴマノハグサ科からハマウツボ科に移行したが、葉緑素をもつ半寄生植物はゴマノハグサ科であるとの思い込みが強くて、少し変な感じがする。 この科の仲間はふつうコゴメグサやママコナの花のように存在感があり、人に好まれる花が多いようであるが、オオヒキヨモギの花はなぜか、目立たずひっそりと 咲いている印象がある。一年草にもかかわらず、乾燥した崖地の岩場でも大きく成長しておりその生命力には感心する。ここでは寄生主はススキのようであるが、成長するに 必要な栄養分の寄生主に対する依存度がどれだけなのか興味深い。