オオヤマカタバミ(大山片喰・大山酢漿草)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)オオヤマカタバミ

・分布 :本州(関東・中部地方)、四国、九州、朝鮮半島、中国(東北部)、ウスリー 
・生育地:低山帯から亜高山帯の林内。
・花期 :3月~4月
・草丈(花茎):5~25cm 

・名前の由来:大山(オオヤマ)は山地に生え、果実の時期に葉が広く大きくなり、草丈も25cmを超えるほど大きくなることからきている。カタバミ(片喰)は夜になると就眠運動で葉を閉じて、葉が半分になったように見え、この様子が葉がの半分が食べられたように見えることから片喰(カタバミ)となった。別名のカタバミ(酢漿草)は草体に含まれるシュウ酸により酸っぱい味がすることによる。

・特徴 : 多年草。地下茎は太く直径5~8㎜で地中を横にはい、先に1~2個の葉と1~2個の花茎をつける。葉柄は花の開花期には4~10cmであるが、結実する果期には伸長して25cmに達する。 葉は3小葉で、小葉は倒三角形、花時は長さ1~2cm、幅1.5~2cmであるが、果期には長さ約4.5cm、幅約6cmと大きくなる。葉表は無毛、葉裏は白色の伏毛、または無毛で、上縁は切形、角が鋭形である。 花茎は葉が開くよりも早く伸びる。苞は花の下につく。花は下向き、またはやや横向きに咲き、直径2.5~3cm、花弁は白色で紅紫色の脈が入る。蒴果。ミヤマカタバミやコミヤマカタバミとは 花が下を向き咲くことや倒三角形の小葉の上縁の角が鋭形であることで区別する。

生育環境     (2025/4/25 長野県 軽井沢町)

生育地は標高1100mほどの火山灰地の落葉広葉林内で、浅間山の噴火による直接的な火砕流の影響を2万年以上受けていない場所である。春先には日光が林床にも届く場所に 4個のオオヤマカタバミの花茎が見える。花はふつう下を向いて咲く。

平開した花   (2025/4/25 長野県 軽井沢町)

オオヤマカタバミは花茎が葉より早くのびて、ふつう下向きに花を咲かせるが、この個体は花弁を平開し斜め横下に向けて咲いている。地上に出たばかりの花茎で平開する花は少ない。花の右側には伸び始めた葉柄がみえる。


ふつうの花    

花茎が地上に出て開花したばかりの斜め下方向に咲いた花。咲き始めの花弁はふつうは平開せずに閉じ気味に咲く。早春の高地であり、霜や冷気から雌しべや雄しべを守るためのようである。 花弁の内側の赤紫色の脈は本種の特徴の一つであるが、慎ましく閉じた白色の花弁の内部に見える赤紫色はよく目立ち、よいアクセントになっている。


 葉  (2025/4/25 長野県 軽井沢町)  

葉は3小葉からなる掌状複葉で就眠(睡眠)運動をおこなう。小葉は倒三角形で先が切形、中央がわずかに凹み、角は鋭形で尖る。角の鋭形はミヤマカタバミやコミヤマカタバミとの区別になる。 ここの個体は花の開花からだいぶ時間を経て結実期をむかえている。

 赤紫色の濃い花    

花弁内部の赤紫色の脈が濃くて花弁の端まで入っている。赤紫色の脈の入りかたは個体差がある。

小さな個体      

花茎の高さ約5cmの開花したばかりの個体。花の形状はコバイモ類を連想させられる。花茎が伸びないのは、この場所が明るく日当たりの良いためで、他のスギ林の林床のような日陰の個体は 花茎がもう少し長いようである。

花の近接画像  (2025/4/25 長野県 軽井沢町)    

前画像の花の近接画像。花は放射相称、5数性で花弁5個、雄しべは10個で5個づつ2輪に並び、そのうちの5個は花弁と対生する。

花の名称  

雌しべは子房上位で5室に分かれ、花柱は5個あり離生している。異形蕊性で個体により雄しべと雌しべの長さが異なる。

萼と苞   

萼片は5個、緑黄色、長さ7~8㎜、長楕円形で花後も宿存する。苞は花の下につき、長さ3~4㎜、披針形。花柄には白色の毛がある。  

咲き始めの花   

咲き始めの花は同じ方向を向いていないが、花弁はいづれも斜め下方を向く。花弁の内部の赤紫色の脈が、花弁の外側にも透けてみえる。  

終わりかけの花   

咲き始めの花にくらべて、5個の花柱が大きく離散しており、花は結実期に入ったようにみえる。

葉の形  (2025/4/25 長野県 軽井沢町)  

オオヤマカタバミの小葉を見ると形状がよく似たクジラの尾びれが頭に浮かぶ。
雑感:分布の中心は信州から関東北部地方で、西日本にもあるが稀で、早春に四国や九州の生育地を何回か訪ねたが、コミヤマカタバミやミヤマカタバミばかりで オオヤマカタバミには出会えなかった。その後、桐生市の鳴神山のスギ林で、葉ばかりの個体が多いなかで、花を咲かせた個体があり、奥ゆかしく下を向き赤い筋の入った花弁を見て、うなずいた記憶がある。