・分布 :本州 四国 九州 台湾 朝鮮半島
・生育地:低山地から人里近くの日当たりのよい貧栄養の湿地。
・花期 :7~8月
・草丈 :15~40cm
・特徴 : 日当たりのよい貧栄養の湿地に生える高さ15cm~40cmほどの多年草。盛夏に茎の先端に花を普通1個つけるが、元気のよい株には複数個の花をつけることがある。
・名前の由来:白鷺が翼を広げている姿に似ていることから。
学名のHabenaria(ハベナリア)は「革紐・手綱」、小種名のradiataラディアタは「射出状の」と言う意味で、ホースの先から最初に飛び出す水の瞬間的な飛散の姿にたとえたものか。
この生育地は標高500mほどの低山の尾根部にあるオオミズゴケも見られる貧栄養の湿原で、赤松が混じった落葉広葉樹で周りを囲まれている。湿原の中でも、日当たりのよい高茎の植物がまだ、侵入していない
泥土が見えるような場所に、点在しているが、その白さは、掃きだめに鶴のようで魅力的である。
細長い葉を3~5枚、根元付近につけるが、根元から高さ10cmほどで短く、他の背丈の高い植物と競合すると日光が葉に当たらず衰退する。また、花茎を高く伸ばすのも周囲の高茎植物に負けずに、少しでも高い所で昆虫にアピール
するためか。サギソウの一株(球根)は一年に数本の10cm程度の地下茎を伸ばし、その先に球根をつけて増殖する。
距の入り口を付近に、柱頭や葯室を配置し、この入り口を目立たせるように、白い側花弁と白いギザギザのある側裂片と披針形の中裂片で構成される唇弁が取り囲んでいる。また、花の尻尾のような3~4cmほどの蜜が溜まっ
ている長い距も重要な役割をはたしている。花粉媒介昆虫として長い距に見合った長さの口吻を持つスズメガ科の昆虫を対象にしていて、花の構造も、スズメガが距に吸蜜するとき距の入り口に口吻を深く差し込んで吸蜜するときに、黄色の花粉塊がスズメガの複眼に付着するらしい。花の白さも昼夜を問わずに、スズメガに知らせるためと思われる。ちなみに、スズメガの飛翔力は大きく花粉は
広範囲に点在する湿原にも届けられ、遺伝子の交流が頻繁に起きているようである。
合着した背萼片と2個の側がく片があり、緑色で白の花弁を目立たせている。距は細く長く緩やかに湾曲している。結実は良いが種による繁殖は蘭菌との関係もあり自然界での発芽率は低い。
茎の先端部についた長い距と3個の萼片に包まれた蕾がおもしろい。この2つの株は元気がよいので蕾を一茎に3個と2個つけている。
自生地では群生といっても、この程度の点在が普通であり、背丈が低いサギソウは湿地内で、他の植物との生存競争に苦労しているようである。
雑感:野草に興味を持ち始めて頃、誰もが感じる造形美の感動を同じように味わった。また、不思議な形の唇弁の側裂片のギザギザが花粉媒介昆虫のスズメガが安定して吸蜜するために、3対ある脚の中脚を
かけて掴まるためのものであるとのことを知り、進化の妙を感じた。湿原も他の高茎植物の繁茂や乾燥化で、サギソウが絶滅した所もあるが、園芸種として見る機会が増えたのは複雑な気持ちである。