サツマアオイ(薩摩葵)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2025)サツマアオイ 

・分布 :九州(鹿児島:薩摩半島) 
・生育地:山地の常緑広葉樹林の林床や林縁に生育する。
・花期 :4~5月
・草丈 :10cm

・名前の由来:サツマ(薩摩)は自生地が鹿児島県(薩摩)の薩摩半島に限られることから。アオイ(葵)は平安時代から続く京都の賀茂神社の葵祭りの「路頭の儀」で使われるウマノスズク科のフタバアオイの葉の葵(アオイ)に由来する。
・特徴 : カンアオイ属の大多数の種と根茎や葉はよく似ているが、花の構造がとくに区別の対象となる。 茎は地表や浅い地中を横に這うが、繁殖範囲を広げるほどの伸びはない。太くてまっすぐな根が少数あり、葉は各茎に数枚つける。 葉柄は長く、常緑性で革質の葉は心形(ハート形)か三角に近い形で、基部の両側は耳状に突出する。葉の表面は雲状の白っぽい斑紋が出る個体が多いが、 斑紋の模様は様々で個性がある。サツマアオイは葉や花の構造は同じ九州に分布し分布域が広く個体数の多いタイリンアオイに似ているが、 萼筒はやや小さく、萼筒口はより広くなり、萼裂片の縁はより強くうねる。萼筒内の壁の襞は上半部では格子状であるが、下半部では縦襞のみになる。花柱上部の 付属突起は短い耳状あるいは角状になる。

生育環境  (2025/5/20 鹿児島県 鹿児島市)

標高約550mほどの自然度の高い常緑広葉樹林の林床で2個の花をつけた個体の全体像。常緑広葉樹林はタブノキやシイ類で構成され、周辺はスギの植林地である。 地質は薩摩半島は四万十帯の砂岩頁岩互層で構成され、この個体は薄く積もった落ち葉の中に生育している。周辺には葉が数枚の花をつけていない個体が点在している。

花(正面)  (2025/5/20 鹿児島県 鹿児島市)

前画像の2個の花を正面から見た近接画像。花は暗紫色、腋生でタイリンアオイやウンゼンカンアオイによく似ている。

葉の模様  (2025/5/20 鹿児島県 鹿児島市)

花に対して斜め上方向から見た株の全体像。葉表は暗緑色、左右に出る雲模様で、下がり藤とよばれる一般的な葉模様である。 付近に点在する花をつけていない葉だけの個体の葉表の模様は多様であったが、関西から西に普通に分布するミヤコアオイやサンヨウアオイなどと同じであった。

花(斜め上方向)  (2025/5/20 鹿児島県 鹿児島市)

前画像の斜め上方からの近接画像。3個の萼裂片の縁は著しくうねっている。このうねりの様子は縄文時代の火焔土器の雰囲気を感じる。

 

開花中の個体(花に対して側面上方向から)

萼筒が見えるように花の側面上方向から見た画像。周辺に散っている白い花はエゴノキの花である。

萼筒と花柄

 花を側面から見た近接画像で、萼筒と花柄の様子がわかる。花柄は長さ1cmほどで短い。萼筒は長さ2cm、幅2.5cm、ノドは括れ口環がある。

萼筒の開口部 

 一個の花を正面から見た近接画像で、萼片の基部隆起の凹凸はおおきく皺状である。

萼筒と萼裂片 

 一個の花を側面からみた近接画像で萼筒は西洋梨型で萼裂片は大きくうねり、上面は毛状体でおおわれ、下面は無毛である。

萼裂片のうねり 

 萼裂片の顕著なうねりを強調した近接画像。雄しべは12個、花柱は6個、離生で先端は2裂する。

葉 (2025/5/20 鹿児島県 鹿児島市)

 葉は卵形、長さ5~10cm、幅4~8cm、基部はハート形、先端は少しとがる。  
雑感:カンアオイの仲間の同定は生育する地域の情報がないとなかなか判別困難で、サツマカンアオイもタイリンアオイやウンゼンカンアオイと花がよく似ており まぎらわしいが、実際に花を見て、萼裂片の縁のうねり具合は想像していたより強く特徴的であった。自然度の高い常緑広葉樹林の林床に生育していたが、 葉の枚数が多い個体でも花をつけている株は少なかった。