・分布 :本州(山口)
・生育地:集塊岩の谷間の岩上や斜面に生育している。
・花期 :10~11月
・草丈(花茎):20~40cm
・名前の由来:セトウチ(瀬戸内)は唯一の生育地が瀬戸内海に浮かぶ島にあることに因み、ギボウシ(擬宝珠)はこの仲間の若い花序(蕾)が擬宝珠(ぎぼし、ぎぼうしゅ)とよばれる神社仏閣の橋や回廊の主要な柱の上に設けられる飾りに似ていることからきている。
・特徴 : 根茎のある多年草。葉は根出し直立する。葉は広卵形、基部は心形、質は厚く上面は深緑色、裏面は著しく粉白、脈は平滑で脈間は狭くない。花茎はまっすぐ斜上し、深緑色。
苞は花茎の伸長時は重なり合って閉じているが、開花時はボート形で開出する。花被の内側の脈は淡く着色し透明線は花筒上部の半分しかない。雄しべは花筒からより外に出る。果実は蒴果。
標準的な個体の全体像。半日蔭の谷間の斜面に生育する個体。4個の葉が根出、直立し1個の細い花茎をのばし、複数個の花をつけ最下部の花が開花している。
前画像の花茎先端部の近接画像で、花茎の上部に多数の苞がつき、その腋に花が1個ずつつき、総状花序となっている。ふつう、花は1日花で朝開き午後にはしおれる。
前画像と同じ個体を斜め横方向から見た画像で、花が筒状鐘形であるのがわかる。
前画像の近接画像で、花筒は上部で鐘形、花被片は6個、下部は細い筒状で、花被の内側の脈は淡紫色である。
集塊岩でできた谷間の半日蔭の岩上や斜面に生育している。陽射しが入る明るい日陰から日の射さない薄暗い日陰まで適応範囲は広いようで、周辺にはイワヒバやイワギリソウなども見られる。
前画像を少し離れた場所から見たもので、岩の急斜面にスゲ類などと生育している。根茎から伸びた葉柄が長く細い花茎は直立し斜上している。大きな葉と一個ずつ花を咲かせた様子が絵画的である。
集塊岩の岩の隙間に根茎を下ろし開花している個体。栄養分の乏しい岩の隙間で、明るく乾燥気味の場所であるためか、葉先が枯れている葉が見られる。
厳しい環境であるが、しっかり2個の花茎をのばし開花している。
前画像の花茎の先端部の近接画像。明るい場所であるためか、開花が進み、花茎下部の花は結実し果実をつけ、苞は枯れている。
乾燥して葉を巻いているイワヒバと共に崖地の岩上に生育している個体。垂直に近い崖のためか、花茎が岩肌に触れるように垂れ下がって開花している。
乾燥した厳しい環境であるが、強健種でたくましい。
前画像の花茎の近接画像。傾斜が緩やかな場所の個体にくらべて、崖地の個体の花茎は細く、直立して斜上できるような強度が花茎に備わっているようには見えないが、
しっかり垂れ下がりながら開花している。
花茎の先端部で開花したばかりの花とこれから咲こうとする蕾である。一日花であるため、花がしおれるのも早いが、この個体の咲き始めで苞も整っていて瑞々しい。
ギボウシ属の特徴である花被片は6個、雄しべは6個で花筒の外に出ている。花糸の先の葯は丁字形につき、花柱は一個で花糸とほぼ同じ長さである。
花被の内側の淡紫色の脈がセトウチギボウシの特徴のひとつである。
崖地ではあるが緩傾斜で灌木の下に群生している。腐葉土を含む土壌があるためか、崖地の個体と比べて株が元気で、花茎も太く、直立し斜上して多数の花をつけている。
崖地の岩の隙間の個体。葉柄は約20cmでやや細く基部から中部まで紫褐色を帯びる。葉は広卵形、基部は心形、質は厚い。
崖地の岩の隙間に根径を下ろしている個体。葉の上面(表面)は緑色から深緑色であるが、裏面はいちじるしい粉白で脈は平滑である。
この画像では陽光が葉表から射しているため、逆光になりセトウチギボウシの特徴のひとつである裏側の粉白色がうまく表現されていない。
半日蔭で腐葉土を含む土壌があり適度な湿度がある場所は他の植物との競合が激しく自然遷移もあり今後が心配される。
雑感:ギボウシ属はユリ科からあまりなじみのないクサスギカズラ科に移行したが、これはAPGの進化系統を遺伝子レベルでの解析らしく、外見からの、のんびりとした分類は否定されたようで
さびしいが本筋なのであろう。ギボウシの仲間の分類は迷うことばかりであるが、その点、本種は生育場所、葉の裏の粉白、花被の内側の脈の淡紫色の着色、葉柄の特徴などわかりやすい。