・分布 :本州(伊豆半島、伊豆諸島)
・生育地:海岸の崖などの風衝地
・花期 :10~11月
・草丈(花茎):約10cm
・名前の由来:ソナレ(磯馴れ)は「潮風のため木の枝や幹が地面を這うように生えていること」を意味する。センブリ(千振)は「熱湯の中に薬草を浸して成分を溶かしこむことを振り出すというが、
千回も振り出してもまだ苦い」ということからきている。このことから、潮風の強く吹く海岸崖地に生育するセンブリの仲間ということでソナレセンブリとなった。
・特徴 :1年草。茎は基部からよく分枝して株立ちとなる。葉は対生し、葉身はへら形で長さ5~15㎜、先は鈍く、多肉質で表面に光沢があり密接して生える。花は短い柄があり小枝の頂か葉腋に1個ずつつく。
萼裂片は5個あり、花冠の裂片よりはるかに短い。花冠は白色~淡紫色で5深裂し裂片は倒卵形で長さ約15㎜、幅約5㎜、よくめだつ紫脈があり、中央部より下方に短い毛状突起のある黄白色で楕円状の蜜腺溝が2個ある。
雄しべは花冠裂片と同数で裂片の基部につく。子房上位で、柱頭は2個あり板状である。蒴果。
生育地は風衝地の海食崖の海食崖で、地質的には1000万~200万年前に浅い海での海底火山活動で生じた溶岩、火山礫、火山灰などの堆積した白浜層群とよばれる地層の土壌に生育している。
草丈約10cmと小さく、樹木や高茎植物との明るさをめぐる競争には負けるため、これらの植物が密に繁茂していない湿り気のある土壌が見える斜面や崖地に生育する。
上部にあるのがイソギクの葉で、イソギクは乾燥した岩場にも見られるが、ソナレセンブリは少し湿った土壌を好むようである。
ソナレセンブリは限られたエリアに点在しているが、群生している集団は見られなかった。ここでは2個の株が隣接して生育している。
雨が降ると急傾斜の沢になりそうな場所に生育している個体。多数の花をつけた開花し始めの大きな株で、この崖地の上部には樹木のイブキが数本あり、その落葉が周辺にみられる。
小さな株であるが花を7個もつけ、たくましい。
草体はホラシノブより小さいが、葉面が広く、葉質が厚いハマホラシノブがソナレセンブリの傍らに生えている。1年草であるソナレセンブリは崖地の土壌の崩壊が少しずつ継続して起こるような裸地に種子を飛ばして、毎年生きながらえているようである。
茎は基部から中部まで紫褐色を帯び、基部から分枝して株立ちとなる。葉は対生し、葉身はへら形で長さ5~15㎜、先は鈍く、多肉質で表面に光沢があり密接して生える。
花は短い柄があり小枝の頂か葉腋に1個ずつつく。
花の近接画像。花冠は白色~淡紫色で5深裂し裂片は倒卵形で長さ約15㎜、幅約5㎜、よくめだつ紫脈がある。萼裂片は5個あり、花冠の裂片よりはるかに短く、先は鈍い。
花冠裂片の中央部より下方に短い毛状突起のある黄白色で楕円状の蜜腺溝が2個ある。
雄しべは花冠裂片と同数で裂片の基部につく。子房上位で、柱頭は2個あり板状である。
花冠裂片がまだ直立している開花したばかりの下側の花はもうすでに葯の青色の表面が破れ中の黄白色の花粉がみえ、花冠裂片が平開している上側の花の葯は黄白色の花粉しかみえず、いずれも雄性先熟の雄性期である。
雄性先熟期がすぎると雌性期になるが雄しべ(葯と花糸)が柱頭から大きく離れたり、柱頭が変化するような現象はないようである。
センブリ属の花は雄性先熟の種であるが、この花は花冠が平開しているが、雄しべの葯はまだ青色で裂開してなく花粉を出していない。
ソナレセンブリは顕著な雄性先熟ではないのかもしれない。これは個体数の少ない1年草であることから、他家受粉の他に自家受粉での結実も利用しているように思える。
海岸崖によく見かけるヒゲスゲとツワブキがソナレセンブリの傍らに見られる。
雑感:こじんまりとした小さな草姿と光沢のある小さな濃緑色の葉に白地に紫の縦脈が入った大きな花をたくさん咲かせるソナレセンブリは誰もが可憐なと魅せられる花であるが、
センブリ属の中でもその形態や分布の特異性が注目される植物でもある。日本固有種で伊豆半島とその島嶼部の狭いが限られた地域だけで見られ、海岸の崖地の風衝地に生育するソナレムグラや若いハマボッスの葉に似た乾燥に強い小さな光沢のある厚手の葉をもつように進化したことに驚かされる。伊豆半島にはソナレマツムシソウやイソギクなど他の関東の沿岸部にも自生している植物もあるが、ソナレセンブリは伊豆半島とその島嶼部だけであり、伊豆半島の成り立ちと深く関係しているようである。