タカツルラン(高蔓蘭)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2022)タカツルラン 

・分布 :鹿児島、沖縄、台湾、フィリピン、ジャワ島、インド東部 
・生育地:亜熱帯、熱帯の常緑樹林内。
・花期 :5~6月
・草丈 :5~20m

・特徴 :光合成をせずに木材腐朽菌から栄養を貰う菌従属栄養植物(腐生植物)で、この仲間で世界最大の長さ(5~20m)に成長する。地上茎は赤褐色で細く、全体に無毛、先端部に円錐花序で多数の花をつける。 花は淡黄褐色で径3cm、半開し、萼片は長さ12㎜、側花弁は萼片より少し短く幅も狭い。唇弁は舟形で、先端付近で浅い波状縁、基部は筒状に巻き、前縁の直ぐ後方の内面の中央に馬蹄上の肉質隆起が1本ある。 果実はインゲン豆の鞘に似て、細長く長さ15cmほどの蒴果である。

・名前の由来:樹上高くまで、地上茎を伸ばすラン(蘭)科植物であることから。

樹幹を這い上がった開花中の個体  (2008/05/28 鹿児島県 奄美大島)

直径40cmほどのシイ類の樹幹を地上茎を伸ばし5mほどの高さまで這い上がり、先端部に円錐花序で多数の花をつけた個体である。 まだ咲き始めで、蕾が多いが木漏れ日の中で珍しさもあって、黄褐色の花序が神秘的である。

 

花の全体像 (2008/05/28 鹿児島県 奄美大島)

開花した花は少なく、ほとんどがまだ蕾である。

花序 (2008/05/28 鹿児島県 奄美大島)

 花は同属のツチアケビとよく似ているが、タカツルランのほうが花全体が少し薄い黄褐色であり、唇弁色はタカツルランは花序と同じであるが、ツチアケビは黄色がよく目立つ。  5m~20mもの高所に多数の花をつけるが、花粉媒介昆虫、動物はどんなだろうか。  

地上茎と付着根 (2008/05/28 鹿児島県 奄美大島)

 樹幹に付着根を出して、地上茎を安定させ這い上がる。日本産のラン科植物で、樹上の幹や枝に着生する植物は多いが地中で発芽して 樹幹を這い上がるランはタカツルランだけのようである。さらに、この地上根(付着根)は根と名前が付くだけあって、枯木の樹幹であれば 樹幹中にいる木材腐朽菌から栄養をもらい成長するようで、凄い生命力である。また、地上根が出る節には短い苞葉がある。

全体像と生育環境 (2008/05/28 鹿児島県 奄美大島)

 2本の直径40cmほどのシイ類の樹幹に同じ地下茎から出た地上茎で這い上がっているタカツルランの様子である。手前左側の樹幹の右側面を1本の地上茎が這い上がり、右側の樹幹には2本の  地上茎が上に登っており、そのうちの1本は先端部に花序を付けているのがわかる。

蕾の個体 (2008/05/28 鹿児島県 奄美大島)

 地上高5mほどの位置にある地上茎の先端部の円錐花序の様子であるが、右側の地上茎の途中の節からも花序が出ているのが分かる。ピーナツ豆みたいな形状で薄い黄褐色の蕾が多数ある様は 何かの果実がみのっているようにみえる。

地中から出たばかりの地上茎 (2008/05/28 鹿児島県 奄美大島)

 落ち葉の下にある地下茎から3本の細い地上茎が伸長している。地中にいる木材腐朽菌から地下茎が栄養をもらい発芽している。

円錐花序 (2008/05/28 鹿児島県 奄美大島)

 樹幹を這う褐色の茎と薄い黄褐色の花序の対比が生き生きとしている。
雑感:腐生ラン(菌従属栄養植物)というだけでも珍奇であるのに、さらに植物体の長さが20mにもなるということから、ラン科植物に興味を持った人は私を含めて、その出会いを願う人は多いのではと思う。 奄美大島の山中で、偶然に出会ったときはハブの恐怖を忘れるほどであった。興味深いのは枯木に這い上がる地上根が枯木を分解する木材腐朽菌より栄養をもらっていることで、このために地上茎は元気になり さらに成長して、20mにも伸びることができることである。地中の菌にも、枯木中の菌にも共生できる能力を獲得したのはランの進化の多岐にわたる柔軟さを感じる。