・分布 :九州(熊本:阿蘇山、大分:久住山)、朝鮮半島、中国北東部、モンゴル、ロシア(シベリア以東)
・生育地:山地の草原。
・花期 :5~6月
・草丈:50~100cm
・名前の由来:タマボウキ(玉箒)は古代、正月の子の日に蚕室を掃くのに使った玉の飾りを付けたほうきに似ていることちなむ。
・特徴 :多年草で大陸系遺存植物。茎は地上茎と地下茎があり、地下茎の先端にはりん芽群とよばれる芽のかたまりがあり、茎を地上に伸ばしながら地下茎は少しずつ水平方向に伸長する。地下茎の下部には貯蔵根と吸収根とよばれる多数の根が密生しており、貯蔵根は地上で生産された養分(糖分)を貯蔵し、吸収根は土壌からの水分、養分を吸収する。地上茎は直立し、径約1cm、中~上部に多数の枝をだす。枝は角稜があり稜には小突起がある。葉は鱗片状に退化し
そのわきから針葉に似た長さ1~3cmの葉状枝を1~6個だす。花柄は長さ6~10㎜で中央部付近に関節がある。花は雌雄異株で、釣り鐘状の花が下を向いて咲き、下半分が紫褐色、先の方は淡黄緑色。雄花の花被片は長さ約7mm、
雌花の花被片は長さ約4㎜と小さい。雄しべは6個、子房上位で3室、3柱頭がある。果実は液果、球形で径約8㎜、熟すと赤色になる。
生育地は標高約900mほどの南向きの傾斜地のササ類が主として繁茂する草原で周辺には灌木も点在している。地質的には玄武岩質安山岩溶岩やスコリヤ(火山砕屑物)が堆積した土壌である。
草丈約100cmの4個の個体がササ原の中から茎を伸ばしている。茎が出ている周辺のササの高さは30~50cmで、タマボウキの地上茎はササの高さを越した茎の中上部から多数の枝を出し伸びている。ササの草丈はササ原の場所により異なり、高さが1mを超えるような場所ではタマボウキは見られない。背景には樹木のカシワがみえる。
自生地は明るい南向き斜面で風通しもよく、この乾燥気味の環境にはササ類が繁殖力が強くササ原になったようであるが、タマボウキもササ原の中に10個ほどの地上茎がみえる。葉が退化し、マツの針葉のような
葉状枝をもったのは、このような厳しい環境に適用するためのようである。
ササ原の中を通るけもの道に面して生えている個体で、地上茎の下部から先端までの草姿がわかる。4個の地上茎があるが、4個すべて地下茎でつながった1個の株とおもわれる。
前画像の地上茎下部の近接画像。強いササの根も地中に高密度で張り巡らされているとおもわれるが、タマボウキも頑張って地下茎を伸ばし生きているようで生命力を感じる。
1個の地上茎下部の近接画像。直径約1cmほどの地上茎下部であるが、茎に3角形の鱗片状に退化した葉がみえる。この葉は黒褐色に変色し、枯れているようである。
タマボウキは葉が退化し、マツの針葉のような葉状枝をもち、これで光合成をおこなっている。このように進化したのは、明るく乾燥した冷涼な強風の吹く厳しい環境に適合するためのようである。葉状枝は長さ1~3cm 1カ所から1~6個でる。
タマボウキは雌雄異株であるが、花のつく位置は地上茎の中央部付近の枝で、上部にはつかない。花は枝に多数、下を向いて付き、外見からは雄花か雌花かはわからない。
地上茎から分枝した枝につく花。花は枝の節状の場所や葉状枝の腋についている。
枝から葉状枝がでているが、葉状枝の腋には花柄の短い花がついている。右側には枝から1個の花柄が伸びて花をつけている。
外見からは雄株か雌株かは識別できないが、この個体は雌花をつけた雌株である。花が咲いた後に点々とある小さな黄色の実のような球体は雌花の不稔の跡のようである。
前画像の下部の枝の近接画像。枝から1個の葉状枝が出ており、腋から2個の花柄を伸ばし釣り鐘状の花を下に向けて咲いている。下部の右端の花に小さいが柱頭がのぞいており、雌花であることがわかる。
花柄は長さ6~10㎜で中央部以上に関節がある。
雌花の近接画像、柱頭は3個に分かれている。ちなみに雄花の雄しべは6個である。
子房は上位で3室、花被片は6個。雄花の花被片は長さ約7mm、雌花の花被片は長さ約4㎜と小さい。
タマボウキの地下茎の下部には多数の根が密生していて、太い根を貯蔵根、細い根を吸収根とよぶ。貯蔵根は栄養を貯蔵、吸収根は土壌から水分や養分を吸収する。
この地下茎がササ原での生存競争に役立っている。
雑感:食用に古くから栽培されているオランダキジカクシ(通称:アスパラガス)とタマボウキは本当によく似ていることに驚かされた。久住山の自生地で見るタマボウキは強い繁殖力をもつササに追いやられながらも
地下茎の特徴を生かして細々と生きながらえているようにみえる。やはり、阿蘇山の自生地のようにここも山焼き、草刈りなど人の手が必要であると思われる。大陸系遺存植物であり、それだけでもロマンがあるが、
温暖化や環境変化に耐えて生きながらえてほしい。