テバコマンテマ(手箱マンテマ)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2020)テバコマンテマ

・分布 :四国(徳島、愛媛、高知)、朝鮮半島南部 
・生育地:山地の明るい岩壁や林内などに生育する。
・花期 :5~8月
・草丈(花茎):20~60cm 

・名前の由来:テバコマンテマ(手箱マンテマ)のテバコ(手箱)は高知県の手箱山で発見され、マンテマの仲間だったことからこの名がついた。 マンテマは和名漢字はなく、江戸末期に渡来時の呼び名「マンテマン」からきているなど諸説あるがはっきりしていない。

・特徴 : 多年草。茎は叢生し、下部は地を這うか斜上し、上部は直立する。葉は卵形、長さ2~4cm、幅1~1.5cm、葉先は鋭尖頭、両面無毛で短い柄がある。 花は径1.1~1.5cm茎先に集散花序につき、花柄は長さ1.7~2.5cm、苞は小さい鱗片状で緑色。萼は筒状で鐘形、長さ6~7㎜、緑色で5中裂する。 花は5個で爪は細く舷部は倒卵形、長さ6~7㎜、2浅裂する。蒴果。

生育環境     (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市)

標高1500mほどの結晶片岩類でできた断崖の岩壁に生育している個体。岩の隙間に根を下ろし、茎は叢生し下部の茎は這い、上部の茎は直立し 花を集散花序に多数つけ、3個の花が開花している。岩棚に生育するテバコマンテマの典型的な場面である。

岩棚の個体   (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市)

断崖絶壁をともなう岩峰を構成する地質は結晶片岩類であるためか、板状にはがれやすく、岩の隙間も多いためか他の岩場を好む植物も多く生育している。 手の届かない岩場の岩棚に生育している個体を横から見た画像である。


全体像 (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市)   

前画像を少し離れてみたもの。スゲ類、イワヒバ、スダレギボウシなどが傍らに生育している。

テバコマンテマとイシヅチボウフウ   (2004/8/16 高知県伊野町・愛媛県 西条市)  

岩の隙間のある岩棚にイシヅチボウフウやスゲ類と生育している個体。イシヅチボウフウは光沢のある濃緑色の1~2回3出羽状複葉で右下に花はなく葉だけ見えている。 テバコマンテマの白い花を多数咲かせたこの草姿は、同じナデシコ科であるがミミナグサ属のミミナグサを連想させる。

一茎一花の個体。  (2004/8/16 高知県伊野町・愛媛県 西条市) 

マンテマ属の花は単生するか、集散花序につくがこの花は単生している。

花の近接画像 (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市) 

花は径1.1~1.5cmで、花弁は5個で白色、基部の爪は細く、先の舷部は倒卵形で2裂している。白色のスッキリとした清らかな花である。

花の構造  (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市)  

雄しべは10個、花柱は3個、白色の花弁の舷部基部の内側に一対の付属体(鱗片)がある。

花柄と萼   

花茎の先端部を横から見た近接画像。花柄は長さ1.7~2.5cmとながく、萼は筒状鐘形、長さ6~7㎜、緑色、無毛で5中裂し、マンテマ属の特徴である肋状の脈がある。 

崖下の草付きの個体   

岩峰の下部は灌木帯になるが、その境界付近の岩壁は草付きになっていて、スゲ類などいろいろな植物が生えており、テバコマンテマもその中に生育している。 ここは日当たりの良い岩壁の岩の隙間の乾燥気味の厳しい環境に生育する個体にくらべて、適湿な土壌で、適度な日陰の環境下で生育する個体は草丈が60cmほどにも大きくなり、花も多数つけて一見別の種に見えるほどである。

花茎   

前画像の花茎の近接画像。崖地の草付きから水平方向に花茎をのばして、多数の花をつけている。半日蔭であるためか、葉や花茎も緑色で瑞々しい。

全体像    

崖地の岩壁の隙間に生える蕾状態の個体の全体像。このような厳しい環境の個体は草体が30cmほどで小さい。

茎と葉  (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市)  

茎には短毛が生え、葉は対生し鋭尖頭で縁には毛が生えている。

果実と花   (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市) 

蒴果は卵状楕円形である。

訪花昆虫   (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市) 

前画像の花を訪れた昆虫で、甲虫の仲間のようである。

岩陰の個体 (2024/7/28 高知県伊野町・愛媛県 西条市)   

ひっそりと岩陰に咲く個体。傍らにはコバノウスユキソウ、イヨノミツバイワガサなどが生えている。
雑感:標高1500mほどの断崖の岩壁に咲くテバコマンテマは、今では人目に付かないか、転落するような危険な場所にしか残ってない、いわゆる高嶺の花になってしまったようである。 近づけない岩棚に咲く白い可憐な花は眺めているだけで楽しいが、興味がわくのはその分布である。朝鮮南部にも生育するらしいが、日本では四国の高山だけらしい。 東赤石岳のヒナシャジンも同じような分布であるが、それよりも同属他種にくらべてテバコマンテマのほうが形態的変化が大きく、なぜ四国の高山だけでこのように変化したのか不思議である。