・分布 :九州(宮崎)
・生育地:花崗岩質の山地の谷あいの湿気の多い陰地。
・花期 :6~8月
・草丈:50~100cm
・特徴 :属名にもなっている屋久島固有のシャクナンガンピによく似た落葉低木。枝は太く若枝は上部に密に葉痕がある。葉は束生状に互生し、薄い草質で大きく、無毛、倒卵形~卵状倒披針形で
長さ5~18cm、幅2~7cm、長さ2~5㎜の短い葉柄がある。今年枝端は数個に枝分かれする場合もあるが、それぞれに長さ5~20㎜の無毛の花柄を出し数個から30個の淡紅色の花を開く。萼筒は無毛で
長さ10~13㎜で中ほどから曲がる。乾果は緑色で萼筒が宿存する。
・名前の由来:ガンピ類は日当たりの良い岩上に生えるが、本種は山中の湿気の多い陰地の土中から生えるとの認識が現地の住人にあり、このことからツチ(土)から生える
ガンピ(斐=ヒ)のキ(木)の意味でツチビノキと住人によばれた。その地方呼称を標準名とした。
沢沿いの湿った土と蘚苔類で覆われた斜面に自生している樹高約1mの花をつけた個体。10個ほどの今年枝がみられるが、どの枝端にも虫食いの大きな葉が束生状につき、その中心部に淡紅色の頭状の花がついている。
幹から枝は二股に分枝して伸びているのが分かる。
同じ沢沿いの岩が多い日陰の斜面に自生している葉が虫の食害にあってない個体。束生状の深緑の大きな葉を背景に桜色の花はよく引き立ちきれいである。
ツチビノキの自生地は湿り気のある日陰の斜面やコケに覆われた沢沿いの岩場が多いが、この個体は尾根部の明るい花崗岩質の岩場に自生している個体である。
日陰の個体の葉は卵状倒披針形で全縁であるが、この個体は日当たりがよいためか葉が平開せずに少し内に巻き、葉縁も緩やかな波状になっている。
この場所は過去に伐採などの環境変化があったかもしれない。それでも花を咲かしているのはたくましい。
標高1100mほどの花崗岩質の山でミズナラ、ブナ、ツガ、ナツツバキ、ヒコサンヒメシャラ、リョウブ、タンナサワフタギなどが構成する沢沿いの陽光が入射する湿った明るい林下が
発育適地であるが、この個体はスズタケやススキの生える日当たりの良い尾根部に生育している。樹幹も伸びず、葉が平開せずに少し内に巻き、葉縁も緩やかな波状になっているが、
今年枝の先端には必ず頭状の花をつけている。
葉は枝の先端に束生状に互生する。車輪状に展開した葉は小形のホウノキのようで、その中心の枝端から淡紅色の頭状の花をつけている。
虫食いの少ない車軸状の葉とその中心部に咲く薄いピンク色の花の対比は惹きつけられる。
頭状についた花は普通は数個~30個であるが、ここでは24個である。花は蕾の時は紅色が濃く、開花すると淡い紅色に変化し、萼筒は無毛で長さ10~13㎜、細く中ほどで曲がっている。
4個の花が開花しているが、萼筒の内側は白色で、萼裂片は披針形で外側の2片は大きく、内側の2片は小さい。
花序は今年枝に頂生し、柄は無毛で細く5~20㎜でここでは3個の枝を分けて各枝に淡紅色の花を頭状につけている。
谷あいの斜面に育つ淡紅色の花を咲かせた個体
雑感:日本産のジンチョウゲ科の植物といえば2~4月の早春に咲くコショウノキの白い花を毎年楽しみにしているが、希少種のツチビノキについてはジンチョウゲ科であることは知らなかった。
コショウノキは枝先に6枚ほどの葉を束生状に輪になって付けその中心の枝端に頭状花序で10個ほどの白色の花を咲かせるが、ツチビノキも同様に枝先にホウノキの葉を小さくしたような緑色の葉を5~7枚輪状につけ、
その中心の枝端に頭状に数個~30個の白色~淡紅色の花を咲かせ、属が異なるが同じ科であることがうなずける。沢沿いの日陰の林下に緑色の葉の中心部の枝端から淡紅色の花を多数つけた姿は見事である。