ツクシカイドウ(筑紫海棠)

   
 
   

都道府県別レッドデータ(2022)ツクシカイドウ 

・分布 :九州(熊本、大分)中国中南部、台湾 
・生育地:里山の湖沼の岸辺や湿地の周辺。
・花期 :3~4月
・樹高 :5~6m

・特徴 :落葉小高木。葉は互生または束生、卵状楕円形で長さ5~10cm、幅2.5~4cm、縁部に鋸歯がある。花は径3.5~4cmの5弁花で短枝の葉腋に3~6個散状につけ、蕾は紅色で、 開花時も紅色が混じるが、やがて白色となる。花柄は細く、長さ2~2.5cm。果実は球状で径1cm、秋に赤、黄に色付き熟す。樹皮は灰褐色で古くなると剥がれる。別名は湖北海棠。
・名前の由来:ツクシ(筑紫)は九州北部地方を示し、カイドウ(海棠)は中国名をそのまま和名として用いたもの。属名Malusはリンゴ、小種名hupehensisは湖北省産の意。

咲き始めの花を付けた枝  (2023/04/10 大分県中津市)

早春に新葉の展開と共に咲き、始めは紅色がるためとても新鮮で美しい。

 

開花直後の花と蕾 (2023/04/10 大分県中津市)

短枝に束生した葉の葉腋から数個の細い2cmほどの花柄を伸ばし花を付ける。蕾は紅色で、咲き始めの花弁の内側のにも白地に紅色が混じる。

多数の花をつけた枝 (2023/04/10 大分県中津市)

まだ3分咲きほどの状態であるがほとんど紅色は目立たず、白い花一色に見える。自生地で見ると可憐である。

花序 (2023/04/10 大分県中津市)

 花弁は5枚で、咲き始めは花弁の縁が紅色を帯びる。雄しべは20本ほどで、雌しべの花柱は3~4本で雄しべより長い。  

花 (2023/04/10 大分県中津市)

 花弁は5枚で、咲き始めは花弁の縁が紅色を帯びる。雄しべは20本ほどで、雌しべの花柱は3~4本で雄しべより長い。  

成熟して白色になった花 (2023/04/10 大分県中津市)

 花弁の縁の紅色が退色して、白花になり、雄しべは小さくなり、雌しべの花柱が目立つ。

萼裂片 (2023/04/10 大分県中津市)

 萼裂片は鋭頭の三角形であり、有毛である。

若い果実 (2022/8/10 大分県中津市)

熟す前の若い果実であるが、咲いた花のほとんどが結実しているようで、種子生産がうまくいっているようである。

枝に稔った果実 (2022/10/15 大分県中津市)

薄い黄緑色や橙色の果実がほとんどであるが、熟して萎縮して表面に皺がいるとエンジ色になる果実が多い。 赤く色づかないので、ズミのような艶やかな観賞価値はないが、素朴さを感じる。

熟した果実 (2022/10/15 大分県中津市)

赤く色づかず、薄い黄緑色の果実が多く見られ、そのまま熟し株の茎にみのった多数の球形の液果の果実。熟すとエンジ色になる。

幼葉 (2023/03/22 大分県中津市)

ズミの幼葉は2つ折りであり、片巻であることがツクシカイドウの特徴の一つに挙げられている。

若葉 (2023/4/10 大分県中津市)

花を付ける短枝の葉は束生するが、伸長する枝の葉は卵状楕円形で互生する。ズミのような3裂~5裂するような葉はほとんど見られない。若葉の葉身は無毛で光沢もあり瑞々しく、これも特徴の1つに挙げられている。

壮年期の葉 (2022/8/10 大分県中津市)

夏季の壮年期の葉で表面の光沢も失われ、全体にざらついた感じがする。

樹幹 (2022/8/10 大分県中津市)

直径20cmほどの幹で、樹皮は灰褐色で縦に裂けて剥がれる。ここでは溜池の岸辺沿って30個体ほど自生しているが、局地的で 乾燥化が進んだ所では他の樹木やツル植物、ササなどと競合し衰退している個体も見られる。しかし、種子からの稚樹も確認できるのが 救いである。

枝幹と蕾 (2023/3/22 大分県中津市)

3月下旬であるが、早くも幼葉を展開し短枝に赤い蕾をつけており、生命力を感じるとともに、開花したときの様子を想像するのが楽しい。 枝の樹皮の色は灰色と灰褐色が斑模様になっている。

生育環境 (2023/4/10 大分県中津市)

 林の中から溜池に滲み出すように流れ込む岸辺に生育して開花している個体。枝はよく分枝して横に広がった樹形になる。
雑感:ズミとよく似た種であり、同種という説もある。しかし、ズミは九州では少なく福岡県では絶滅している。ズミは大分県でも冬季の寒冷地の日田市や玖珠町に少数が生育しているが、中津市のツクシカイドウの自生地とは遠く離れ ている。この自生地の海抜は150mで、1930年に採取された標本の場所(海抜30m)から直線で7㎞ほどしか離れておらず、採取標本と同じツクシカイドウと考えられる。また、別名のコホクカイドウはセイヨウタンポポと同様なアポミクシス繁殖植物 であるが、ここに生育している個体も同じように結実するのであろうか。